【連載】気になる事故物件の調査方法。古い情報を知る方法はあるのか?
こんにちは。行政書士グリンエア法務事務所所長の吉田幸弘です。
建物自体が事故物件だった、という場合は、なんとなく風の噂のようなものが流れて来て、それがどのような事故・事件だったのかを知ることになるものです。しかし、その土地自体になんらかのいわくがある、というような場合は、原因をなかなか知り得なかったりします。田畑を潰して宅地にした場合は、餌となる虫に釣られてムカデが発生して困るという話を聞きますし、河原を埋め立てた場合は地面がいつも湿っていて、土台が傾きやすいという話を聞きます。しかし、このような目に見える被害はなんとかなっても、そうではない場合はなかなか解決することは難しいようです。
2016年(平成28年)に、「残穢 ―住んではいけない部屋―」という映画が公開されました。皆さんはご覧になられたでしょうか。元々は書下ろしの小説で、第26回山本周五郎賞など複数の賞を受賞している作品です。
物語は、主人公がそのマンションの一室が事故物件ではないのかと、法務局で登記簿を取ったり、どんな人がそこに住んでいたのかを周りの住民に聞いて回って調査を進めて行くと、そこがとんでもない土地の上に建っているマンションだった、ということがわかる、というお話です。
今私達の住んでいる土地は、江戸時代に武士が支配していた知行地が武士から取り上げられたもの、と言っても過言ではないでしょう。すると、例えばサンシャイン60の建っている場所は元は巣鴨拘置所だった、という話くらいならまだしも、もっと昔に遡って、江戸時代にはどんな場所だったのか、という事になると、それを確認することは至難の業です。
土地の過去を知るには、旧土地台帳か古い戸籍謄本を使用する
その土地の様子を知るには、「登記簿謄本」をその土地を管轄する法務局で取得するということになります。しかし、ずっと昔の様子となると、「旧土地台帳」というものを利用することになります。この「旧土地台帳」からは、明治20年頃から昭和12年頃までの、その土地の所有者が調べられます。管轄の法務局に請求すれば無料で取得出来るので便利です。ただ、そこに表示されるのは「所有者」に限られるので、借りていた人の情報は出て来ません。当時の所有者を確認して、その子孫に尋ねるしかないでしょう。
では「旧土地台帳」より前の情報を知りたい場合はどうしたら良いのでしょうか。それには戸籍謄本を利用します。正確には「改製原戸籍謄本」或いは、「除籍謄本」になります。そのような戸籍の本籍に注目するのです。
しかし、古い戸籍を見る際は少し工夫が必要です。本籍が縦棒で消されていて、新たに本籍が記載されている場合には、本籍の表示が変わったことが一目瞭然です。例えば「△△郡〇〇町六十三番地」と表示されていれば、「郡」はやがてなくなり、「町」が「市」に変わり、「六十三番地」が「一丁目1番地63号」というようになります。すると現在はどこの地番がかつての「△△郡〇〇町六十三番地」なのかを知ることはそう難しくはありません。
しかし、時々古い戸籍の本籍に、「田中町五番屋敷」というような書き方をされているものを見つけます。そうなると、先ほどの例と同じように地番の変遷から、現在の地番を知ることは出来ません。例えば山田一郎という人の「明治19年式戸籍」の本籍に「田中町五番屋敷」と書かれてあって、同じ山田一郎さんの次の戸籍の様式である、「大正4年式戸籍」の本籍が「田中町六十三番地」とあれば、「五番屋敷」と「六十三番地」が同じ場所だということがわかります。
もし、土地について気がかりなことがある場合は、「旧土地台帳」や「明治19年式戸籍」の本籍を活用して事実を調べて行くことになります。
行政書士グリンエア法務事務所 所長 吉田幸弘
NPO法人市民生活支援センター 前理事長
5年度に渡って、相続税、贈与税、所得税、(法人、個人)住民税の申告相談受付。著書では「大家さんが是非知っておきたい法律の話」を面白く、わかりやすく解説している。昨今の安易な「墓じまい」を危険視し、安全な墓じまいの為の「傳の会」を発足、作家の顔も持ち、amazonで発刊されている「影山一族」は三春町、田村市、須賀川市、フランス・リヨン日本人会の寄贈図書になっている。
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