管理委託を某大手企業に任せ、痛い目を見た全記録と原因分析
- 2018/11/15
- 貸す
- 管理委託を某大手企業に任せ、痛い目を見た全記録と原因分析 はコメントを受け付けていません
管理委託会社(A社)と度重なるトラブル、そして契約解除に至るまでの経緯をお話します。
自分自身、大変多くの学びを得ることができましたし、管理会社以外のことでも応用できる原則のようなものが理解できましたが、成功か失敗かで言えば明らかな失敗。
このコラムでは、その失敗のポイントと原因、再発防止策について考えてみたいと思います。
選択ミスは「入居付けの不安」から
ぼくが講演や執筆をする際に添えられる紹介文には、「入居付けが厳しい地方で賃貸経営をしている」とか「管理会社とタッグを組んで運営するスタイルを得意とする」というようなことが書かれています。
実際に、管理会社さんとの付き合い方について話をすることも多いし、このような関係先とのコミュニケーションについて書かれた本まで出しています。そして、ぼくは本に書いたりセミナーでお話したりするノウハウの通りに賃貸経営をやってきましたし、地域平均を大きく上回る入居率を確保し続けている訳です。
ただ、今回の管理委託はいくつかの要因があって、セミナーで話しているような「自分の原則」からは逸脱した行動をしてきました。
自治体ごとの格差を理解していなかった
ひとつめの要因として、この物件が神奈川にあったということです。横浜の子安という場所で購入したマンションを短期間保有(転売しました)していたことはありましたが、中長期の保有を目的として一棟もの物件を購入したのは初めてでした。
知らない場所や遠隔地で物件を購入することに抵抗はないのですが、富山や石川に比べて神奈川や埼玉といったエリアは自治体ごとの「格差」が大きいと感じています。横浜や川崎のような場所に比べて秦野は「イケてない」エリアだったので、十分な利回りは確保していましたが、入居付けには不安がありました。
判断が難しい全空アパートで「入居付けに強いか」のみで管理会社を選定
そして、この物件が人生初の「全空アパート」だったということも、判断ミスにつながりました。
これまでも入居率が60%や45%といった物件を購入し、全て満室に導いてきましたが、やはり全空は違います。わずかでも入居があれば、「少なくとも、●ヶ月前に家賃●●円で入居をした人がいるのは事実だ」ということが分かり、それをもとに物件のバリューアップをしたり、募集条件を変更したりといった工夫ができます。
しかし全空にはそういった基準がありません。リフォームのグレードや家賃設定は適切だったかどうかは、募集してから数ヶ月程度は経過しないと分からないのです。
そういった理由から、これまで購入した物件に比べて入居付けに大きな不安がありました。地域最安値に近い条件で募集しているなどの勝算はありましたが、この不安から「入居付けに強いか」のみで管理会社を選定してしまったのです。
首都圏と地方の管理会社の違い
子安のマンションも短期的にですが、管理を委託している会社がありました。
その会社も、管理会社としてさほど優秀ではないということは分かっていたのですが、この物件は「1日でも早く満室にして売却する」ことを優先していたので、やはり秦野アパートをA社に委託したのと同じく「客付け力」を重視していました。
委託した会社ではたくさんの管理受託物件があるにも関わらず、火曜・水曜と連休でコールセンターのような対応もしていないという酷さでしたが、こちらは実際に入居がぽんぽんと決まり、管理の弱さが露呈する前に売却ができました。今はどうなっているか分かりませんが・・・。
そもそもですが、首都圏の管理会社と地方のそれ(と言っても北陸しか知りませんが)は、元々のレベルがかなり違うような気がします。賃貸仲介と管理の両方を手がけている首都圏の会社の多くが、管理は「仲介の売上を増やすための施策のひとつ」であって、あまりマジメに管理業務を行っていな気がします。
もちろん、私の知り合いでもある藤澤雅義社長が率いるアートアヴェニューのような「管理専門会社」は違います。管理戸数が地方に比べて多いので、様々なインフラに経営資源を投入できるという強みがあります。
具体的には、現地に行く頻度がまったく違います。
北陸の管理会社さんは、定期的な巡回が管理業務の中に含まれていますが、今回のA社を含む「何となく管理をやっている会社」は、物件の様子を見に行くことは業務ではありません。
また、社員さんの「営繕スキル」も全く違います。
金沢や能美の管理会社さんは、普段は客付け業務をしている社員さんであっても、ある程度の営繕業務ができるそうです。金沢では、社長自ら車にいろいろな工具を積んでいたりするほどです。
一方、首都圏の2社は、パッキン交換もやってくれませんでした。
管理料の根拠が分からないくらいの杜撰
ここからは、具体的にどういう状況だったのかを説明していきます。
何でもオーナーの意向を確認するコールセンター
A社では営業効率を高めるために、24時間対応のコールセンターに連絡をするよう、入居者に通知しています。コールセンターはそれなりに機能していて、入居者からのクレームや連絡を正しく記録して伝えてくれます。ただ、「必ず最初にオーナーの意向を確認する」というルールで運営されています。例外はありません。
例えば、入居者からの連絡が来た時には、以下のようなメールが送信されてきます。
このように、どんな些細なことであっても営業店(=秦野店)の前にオーナー宛の連絡が来ます。ここで「では、業者さんの手配をお願いします」と伝えると、A社の提携業者が遠方から作業をしにきて、出張料1万円(税別)の費用を請求されるという訳です。
通常の管理委託契約であれば、
「コールセンターの判断で秦野店に直接連絡 → 店舗社員が蛍光灯を交換 → オーナーに事後報告」
という流れなのですが、断固としてそれはやらないのです。
仕組みはどうしても変えられないということなので、何とかこういう時に出張してくれる「近場の」業者さんを見つけて全般的な修繕を依頼しました。これで高額な出張料を取られることはなくなりましたが、
「コールセンター → 自社 → 見つけた業者さん」
という流れになっただけで、やはり営業店は何の関与もしませんでした。
私が考える管理料の3つの業務
ぼくは、管理会社さんに払っている「管理料」というものは、
- 日頃の入居者対応
- 家賃の収納
- 入居促進活動
の3つから構成されていると思いますが、エイブルのような仕組みだと①の業務をやっているとは言えません。コールセンターの利用料とでも考えるべきでしょうか。
家賃滞納の対応もお粗末だった
さらに、②の家賃収納についても滞納分について明確な仕組みがないようで、滞納の放置が何度もありました。
実際のメールを紹介します。
2ヶ月連続で未収だった法人(複数戸を賃貸している)の状況についての社員さんとの確認のやりとりです。
11月29日
翌日の30日に「確認します」という連絡がきたものの、その日のうちに回答が来なかったので、次の12月1日に督促をしています。
その日の夕方に返信あり。
こんなやりとりでは管理を委託している意味がありません。
滞納が1件あると、だいたいこんな感じのやりとりが続きます。なので②の収納業務を適切にこなしているとも思えません。
入居促進活動どころか、真逆の行動も
さらに③の入居促進ですが、近隣の仲介会社に対して、オーナーの許可なく仲介をさせない通達をするなど、入居率向上とは真逆のことをしてくれました。このため、いったい自分はどういった業務に対して報酬を払っているのか分からないような状況でした。
現象ではなく、理由と本質を捉える
管理を移してから確認できた話なのですが、A社はとにかく「仲介の件数」で業界1位の座を奪いたいのだそうです。年間の仲介件数はトップ企業が19万件に対してA社が15万件。ちなみに3位は14万件ということで、まだまだトップは取れなさそうですが、会社としてはとにかく1位を取りたいらしいのです。
だから給与体制や昇進なども、仲介件数が多い社員が極端に優遇される仕組みになっていることが後になって分かりました。
ですので、ほとんどのエイブルで、件数1位の会社の案件は扱わないそうです。そして、決まりそうな物件は他社で仲介されると困るので、上記のように自店の判断で「出禁」にしてしまうような考えにもなる訳です。
管理を変えてしまうことで、営業力のある(ここだけは認めましょう・笑)A社からの客付けが全く期待できなくなるので、入居率の低下は心配されました。しかし実際には、A社が管理を外れたことで堂々と客付けができるという状況になり、別の仲介会社さんの協力度合いも上がり、管理変更後も問題なく入居が決まっている状況です。
A社については、ここ半年以上も「管理が全然ダメ」「でも入居が減るのは怖い」というジレンマから決断を仕切れずにいました。しかし、なぜ管理がこれほどまでにダメダメなのかの理由を追及していれば、「自社の仲介件数は多いけど、その分他社の仲介を減らすのでトータルは同じ」という事実に気づくのがもう少し早かったはずです。
表面的な現象ではなく、本質を捉えることが大事ですね。
*この原稿は、平成17年6月に満室経営プレミアム会員向けに発行されたコラムを不動産の学校編集部がリライトしたものです。