収入を生むマイホーム「賃貸併用住宅」とは

一般の人に身近になりつつある「賃貸併用住宅」について。

不動産投資にあまり興味がない人でも借りられる始められるこの方法のニーズを捉える2つのニーズと見落としやすいメリットについて解説します。

 

賃貸併用住宅に新たなニーズが生まれている

賃貸併用住宅というと、ひと昔前までは地主さんの専売特許でした。もともと大きな土地を持っている地主さんが、その広い敷地内に自宅を新築する際、数戸の賃貸部分も一緒に建てるというものです。

当然ながら土地を購入する必要がないため、建築費用のみ融資(住宅ローン)を受ければ済みます。高めの賃料が取れるエリアであれば、賃貸部分を2戸程度確保できれば、家賃で月々の返済がカバーできるというものです。

住宅メーカーなどの見本市に行くと、賃貸併用住宅のプランをよく見かけますが、いまだに中心は地主さん向けに販売されています。

 

賃貸併用住宅の2つのニーズ

ただ、賃貸併用住宅の現状はかなり様変わりしており、主に2つのニーズが増えてきました。

1つめは、より良い場所に戸建のマイホームを持ちたい人

2つめは、不動産投資の一環として賃貸併用住宅を持ちたい人です。

2つめに挙げた「より良い場所に戸建のマイホームを持ちたい」というのは、不動産賃貸業にあまり興味のない方はもちろんですが、自宅取得の意欲が高い不動産投資家にもニーズがあります。

その理由として、東京都内の土地が相変わらず高いという問題があります。一般的に思い浮かべる都内の広い自宅というのは、80~100平米ぐらいの2階建住宅です。仮に建坪が25~30坪とすると、土地だけでも20~25坪ぐらいは必要になります。

都内のそれなりに良い場所であれば、土地は1坪辺り200万円以上となります。1坪200万×25坪で単純計算すると、土地だけで5千万円にもなり、さらに建築費用を加えると、総額7千万円は超えてくるでしょう

住宅ローンの借入限度額は年収の平均5~6倍ですから、7千万円以上の自宅を買える方はさほど多くありません。

それでもとにかく立地優先で、23区内の人気エリアに住みたいという方は、中古区分マンションを選択することになるでしょう。しかし、賃貸併用住宅の購入であれば事業性を加味して、年収の10~15倍ほどの住宅ローンを組める金融機関がいくつかあります。年収600万の方でも1億円近くの融資を受けることができますので、先ほど例に挙げたような立地の良い物件が十分に取得可能です

 

立て替え決議の進め方と現状

最近ではお金の勉強をしている、マネーリテラシーの高い人が多くなっています。区分マンションと土地付き一戸建てでは、将来的に残る資産が大きく違うことを理解した上で、多少の不安を持ちながらも賃貸併用住宅を選ぶ方が増えてきています。

ちなみに近年の話題として、中古分譲マンションの建替えが大きな問題になっています。分譲マンションの建替えは、管理組合員である住人の5分の4以上が賛成しないと成立しません。高額な費用負担もあるため、実際に建替えをおこなっている事例はほとんどありません。これでは最終的に将来が見通せないということで、もともと賃貸併用住宅に興味がある方たちの区分マンション離れが出てきています。

<建替え決議の進め方>

 

不動産投資の一環として賃貸併用住宅を取得する

2つめの「不動産投資の一環として賃貸併用住宅を取得する」のは、まず普通の収益物件と比べて融資が組みやすいという点があります。

ある程度の年収や自己資金のある会社員は、サラリーマン大家さんに特化した金融機関からフルローンで融資を受けることができます。ただ、金利が4%前後と非常に高く、融資対象となる地方の中古一棟RCマンションなどは経営面で不安な物件もあります。

しかし、賃貸併用住宅を住宅ローンで取得する場合は、ご自身の属性だけでなく、これから建てる賃貸部分の家賃収入なども加味して、金融機関から大きな融資金額が見込めます。融資額が大きければ、その分だけ土地の価格が高い都区内の良い立地を選ぶことができます金利は一般的な住宅ローンより高いですが、不動産投資用のアパートローンに比べると低い金利で借りることができます。借入期間も最長35年で組めるため、月々のローンを家賃収入で返済していくことも十分に可能です。

 

40平米の自宅と1部屋20平米のワンルーム賃貸が10戸の賃貸併用住宅

こうした理由から不動産投資に不安があるような方でも、都内の賃貸併用住宅からスタートするという事例が増えてきています。さらに追い風となるのが、賃貸併用住宅における融資条件の緩和です。

賃貸併用住宅の融資は、通常自宅部分が総床面積の2分の1以上を占めていることが条件となりますが、いくつかの金融機関ではその要件が緩和されています。自宅部分が最大6分の1以上でも適用される金融機関もあります。

たとえば、これから不動産投資を始めようと考えている独身の方や、ご夫婦の2人家族で広い自宅は必要ないという方は、40平米の自宅と1部屋20平米のワンルーム賃貸が10戸あるような賃貸併用住宅が建てられます。土地・建物を併せて1億円規模の物件にはなりますが、アパートローンに比べれば融資審査は通りやすいですし、普通の一棟アパートとほぼ変わらないスペックの収益物件を手に入れることができます

都区内の新築賃貸であれば、入居付けに困ることなく管理も非常にしやすいでしょう。運営面がどうしても心配だという方は、好条件のサブリース会社がいくつもありますので、安心して不動産投資を始めることができます。

将来的には中古の賃貸併用住宅として売却することもできます。

 

じつは見落としやすい賃貸併用住宅のメリット

普通では購入できない良い場所に自宅を持てるとか、資産価値のある広い土地を保有できるというほかにも、賃貸併用住宅の隠れたメリットがいくつかあります。賃貸併用住宅は当然ながら注文住宅なので、よくある定形の建売戸建と違い、自分の好きな間取りを自由にプランニングすることができます。たとえば用途に合った収納を設けるなど、こだわりの居住空間を造ることもできます。

また、普通の戸建より建物面積が大きいため、屋上部分を有効利用できます。都内などの住宅密集エリアで、屋上が使えるという開放感は暮らしに彩りを与えます。一般の戸建住宅でも屋上設置は可能ですが、賃貸併用住宅の屋上というのは賃貸部分を含めた広い空間をオーナー自身が自由に使えるのです。たとえば屋上でガーデニングやバーベキューをしたり、ドッグランのようなものを作ったり、ハンモックを吊ってこだわりの場所を作っている方もいらっしゃいます。都区内などの土地が高いエリアで、自宅の庭を設けることはなかなか困難な状況です。その点、屋上というのは登記面積に現れない貴重な居住空間となるでしょう。

 

賃貸併用住宅から始める不動産投資のススメ

アパート経営に興味があるけれど、地方物件や築古物件は運営面で不安があるとか、年収や自己資金の面でローンを組むのが難しいということで、不動産投資をなかなか始められない方がいらっしゃると思います。そういった場合は、賃貸併用住宅からスタートすることも選択肢に加えてみると良いかもしれません。

不動産投資用のローンは基本的に平均年収以上のサラリーマンを対象としていますが、そういったローンを使えない個人事業主であっても、賃貸併用住宅であれば住宅ローンの適用を受けることができます。

 

※本コラムは、2016年9月15日配信の「満室経営新聞」から抜粋・加筆・修正したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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