税務調査の基礎知識と実際の流れ。もしもの時に焦らないために

  • 2019/10/25
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多くの人にとって、面倒で怖い存在の税務調査。特に、突然やってくるマルサには恐怖感すら覚えます。

最近では、人気のお笑い芸人が億単位の無申告だったと話題になりましたよね。
でも彼は、何年も申告をしていなかったということで、「そんなのもありなの?」と疑問に思った人も多いでしょう。

ここでは、税務調査はどんなタイミングで、誰に来るの?ということから、実際にどんなことがなされるのか?ということまで、税務調査の基礎知識をまとめてみました。




そもそも、税務調査とは?

税務調査というのは、税務署が納税者の申告内容について正しいかどうかを確認する任意調査です。

では、どれぐらいの法人が税務調査を受けていると思いますか?

正解は、全法人の6%。

単純計算では、10年に1回も来ないことになります。
計算があわない・・・と思った人も多いのかも知れません。

調査には二種類あり、任意調査と強制調査があります。
誰もが恐れる「マルサ」は強制調査のこと。国税局査察部が、脱税の隠蔽工作の有無や高額の脱税があるのではないかと疑った時に調査に入ります。これは裁判所の令状が必要です。なんだか本格的なものですが、一般的な会社には、意外に縁遠いもの。

そして、ほとんどの会社に入っているのか、「任意調査」と呼ばれるもの。これは急に来るのではなく、事前に、「調査に伺います」という連絡が入るのですが、逆に緊張しますよね。

 

税務調査の種類

① 査察
② 税務調査
③ お尋ね(資料箋調査)

もっとも厳しい強制調査が1つめの「査察」です。いわゆるマルサと呼ばれるもので、いきなり予告なしに捜査令状を持ってやってきます。

2つめの「税務調査」はマルサほど強制力がありませんが、受忍義務(じゅにんぎむ)といって、調査を受けなければいけない義務はあります。また、検査権はあるので質問に対して黙秘することはできませんし、虚偽の申告をすれば罰則を受ける可能性もあります。しかし、調査日時までは義務付けられていないため、ちゃんとした理由があれば日時の変更も可能です。

3つめの「お尋ね」は、取引資料箋(とりひきしりょうせん)といって、税務調査の資料材料となる書類提出の協力を求められます。取引資料箋は税務調査の反面資料として利用されています。税務署からは「この期間に取引した相手先の取引記録を出してください」というような形で言われますが、あくまでも任意での協力依頼になります。

 

調査対象になりやすい会社ってどんなところ?

年間6%しか調査を受けないということは、94%の会社は調査を受けていないということです。中には、何年も会社経営をしているのに一度も受けたことがないという人もいますよね。この差は何なのでしょうか?

実は調査対象になりやすい会社には特徴があると言われています。

黒字である
・消費税の還付を受けている
・利息が急増している
・多額の非経常的な経費が計上されている

などがそれにあたります。また、法人設立から3年目に税務調査が入ることが多いとも言われています

もちろんこれは噂レベルでの話。赤字経営でも調査が入ることもありますし、利息が増えていないのに調べられることもありますので、油断は大敵です。




 

税務調査の流れ

ではここから、税務調査から、修正申告とその後の流れを順を追って説明したいと思います。

◎事前通知

まず税務調査がおこなわれる場合は、原則として税務署から事前通知があります。通知内容は調査の開始日時、開始場所、調査対象税目、調査対象期間などです。
顧問税理士さんがいる方は、税理士さんにも同様の通知がなされます。

◎質問検査等

税務調査官が納税者の事業所や事務所を訪問し、申告内容の確認をするための実地調査がおこなわれます。質問事項への回答、帳簿や関係書類の提出などが求められます。
一般的には2名1組の税務調査官が担当し、実地の調査日数は1~2日間で終わることが多いですが、ケースバイケースで数日延長されることもあります。
また、税務調査において必要がある場合には、取引先などに対して反面調査を実施することがあります。

◎調査結果の説明と通知

申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、調査結果の内容(誤りの内容、金額、理由)が説明されます。また、申告内容に誤りがない場合は書面で通知されます。

◎修正申告等、是正または決定

調査官から指摘された内容を踏まえて、修正申告をおこないます。指摘内容に不服がある場合は事実を証明する書類と併せて、更正の請求をおこなうことができます。

修正申告、更生・決定のどちらのケースでも処分が確定した場合には、加算税などが課されることになります。

◎再調査

新たに得られた情報に照らして問題があると認められるときは、改めて税務調査をおこなうことがあります。
税務申告が適正におこなわれていなかった場合は、行政上の制裁として本来の税額に加算税などが上乗せされます。

◎過少申告加算税

申告書に記載された納税額が過少だった場合に課される税金です。
期限内申告で修正申告&是正をした場合 → 加算税10%、加算税15%(※新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%になります)

◎無申告加算税

申告書を申告期限までに提出しなかった場合に課される税金です。
自主的に期限後申告をした場合 → 加算税5%
期限後申告をした場合 → 加算税15%(※納税額に対して50万円までの部分)、加算税20%(※納税額に対して50万円を超える部分)

◎不納付加算税

源泉所得税を法定納期限までに完納されなかった場合に課される税金です。
自主的に納付した場合 → 加算税5%
法定納期限までに納付しなかった場合 → 加算税10%

◎重加算税

過少申告加算税などが課税される場合において、仮装・隠ぺいにより申告しているときは、その過少申告加算税などに代えて課される税金です。
過少申告加算税、不納付加算税にかえて課す場合 → 加算税35%
無申告加算税にかえて課す場合 → 加算税40%

◎延滞税

法定納期限までに各種税金を納付しなかった場合に課される税金です。
納期限の翌日から2か月を経過する日まで → 年2.8%(特例基準割合+1.0%)
納期限の翌日から2か月を経過した日以後 → 年9.1%(特例基準割合※ +7.3%)
※「特例基準割合」とは公定歩合に年4%を加算した割合

 

顧問税理士がいるから安心は本当か?

「うちは顧問税理士がいるから安心だ。税務調査にも立ち会ってくれる」と胸を張っている社長さんもいますが、意外な落とし穴もあるんです。

それは、税理士も全ての税務に精通しているわけではないということ。なんとなく微妙という部分があるケースもあり、経営者には悪気がなくとも、結果的に追徴課税を課せられることもあります。

そもそも税務は、解釈によって成り立っているものであり、その解釈にズレが起こることがあるので注意が必要です。

また、顧問税理士のコミュニケーション能力が高くない場合や、交渉力がない場合は、言われるがままになってしまうこともあります。逆に、正しいと言われるからとゴリ押したために心証を悪くし、悪い結果を導いてしまうこともあります。

税理士さんの中には、「あの人は自分が正しいと思ったことは頑として負けないから、調査官を怒らせてしまう」というケースもありますから、注意が必要ですね。 

 

まとめ

常日頃から正しい会計を行い、無理な節税志向はせず、適切な感覚を持っていることが欠かせないと言えるでしょう。普段から正しい会計と税務を行っておけば恐れる必要はない税務調査。やるべきことをやって、あとはマルサが来ないことを祈るだけ?!

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