【連載】「ここにしかない」に価値がある。事例から読み解く魅力的な物件づくり・満室企画の重要ポイント

  • 2022/3/3
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礼金ゼロが当たり前、1ヶ月取得できれば万々歳。そんなエリアで礼金2ヶ月を取得しつつ、成約賃料は相場の1.3倍。何を隠そう、これは私が2021年に手がけた新築企画における募集一巡目(募集開始から満室まで)の結果です。

アパートの建築や大々的なリノベーションを検討する際、皆さんまず「どういった企画で進めるか」「どんな企画が思い浮かべば満室になるのか」に非常に迷われると思いますが、企画は決して「発想」だけで勝負が決まるものではありません。市況のデータをしっかりと読み解けば、成功への道筋も見つけられる可能性があります。今回は事例から物件企画のポイントをご紹介します。

 

まずは周辺物件を調べる:見える!賃貸経営

新築でも中古物件の購入でも、最初にすべきは案件地周辺の調査です。良い企画をするためには、エリアにどんな物件が供給されているのかを調べることがとても重要です。

調査というと大変そうに聞こえますが、最近では現地に行かずとも、インターネット検索で有益な情報が得られるようになりました。私が重宝しているのは、すばり、ライフルホームズの「見える!賃貸経営」です。

見える!賃貸経営
https://toushi.homes.co.jp/owner/

ご覧になったことがある方も多いと思います。このサイトは該当エリアの賃貸需要や家賃相場、空室率といったデータのほか、入居希望者がよく閲覧する場所を地図上で色分けした「賃貸需要ヒートマップ」など、案件地の潜在ニーズを詳しく調べられる優れものです。ここを詳しく見るだけでも、企画に必要な情報をある程度まで収集することが可能です。

エリアの情報が集まったら、同サイトで次に調べるのは、賃貸入居者の「希望賃料」「希望する住戸の広さ」です。以下は、部屋探しの方が検索した条件と、ポータルサイトに掲載されている物件とを比較して表示したものです。

ここから読み取りたいのは、「需要と供給のギャップ(需給ギャップ)」です。

たとえば、表「賃貸入居者の希望する住戸の広さ」の中の「25平米~」のように、「検索回数◯% < 掲載物件○%」となっている項目は、潜在ニーズを上回る量の物件が供給されている可能性が高いと予測できます。逆に「30平米~」のような「検索回数◯% > 掲載物件○%」の項目は、需要があるのに市場の供給が不足している可能性が高いと考えられます。

そして、私たちが突きたいのは後者の需給ギャップです。求められているのに足りていない、というデータを見つけ出し、その需給ギャップを突く企画を立てられれば、皆さんの経営は満室に向けて大きく近づくことになるのです。

 

人気設備ランキングから読み解く:全国賃貸住宅新聞

全国賃貸住宅新聞社が定期的に発表している人気設備ランキングも、企画を考えるうえで無視することのできない情報です。「この設備があれば周辺相場より高くても決まる」のTOP10はもちろんですが、「この設備がなければ決まらない」のTOP10は、特に中古物件の購入時には有益な情報でしょう。

なお、2021年のランキングでは、コロナ禍による設備への要望の変化がみられました。単なる「インターネット無料」ではリモートワークやオンライン講義の受講が満足にできない、という入居者が「高速インターネット回線」を求めるようになったほか、世帯数に対して20~30%(10世帯なら2~3個)で足りると言われていた「宅配ボックス」については、その数でも不足してしまうほどの状態に。また、巣ごもり需要に伴う自炊率の上昇から「システムキッチン」のニーズも急増。それぞれの設備がランキング順位を上げてきたのです。

こうした設備のニーズの変化も成功する企画のヒントとなるデータです。そして間取り等と同様、設備においても気にすべきは「需給ギャップ」でしょう。

【事例解説:市場データから導いた人気企画】

ではいよいよ、冒頭の成功企画の要点を解説します。この企画も当然、前述のようなエリアの調査・データの分析によって方向性を決定しました。

まず、ターゲットは「カップル・新婚・夫婦+未就学児」といった家族層に絞りました。これは案件地が駅から少し遠く、富裕層単身者には選ばれにくいだろうと考えたためです。結果として、間取りはこのターゲット層が選ぶだろうなかで大きな需給ギャップが生じていた「2LDK」を中心に、「1LDK」を組み込む複合タイプとしました。ただ、需要が見込める反面、この選択の課題は、面積を広げることで投資効率が下がってしまう点です。

そこで、賃料が14〜15万円取れる企画を考えました。まずは、前述の「周辺相場より高く決まるランキング」から「防犯カメラ・オートロック・高速インターネット・浴室乾燥機」などの賃料アップ設備を選択。さらに”攻め”の施策として巣ごもり需要にフォーカスし、「宅配BOXの全世帯設置」「食洗機付き3口ガスコンロシステムキッチン」を導入しました。

マンションの区分賃貸や高級賃貸物件でない限り、ビルトインの食洗機付き物件はほとんど市場に出てきません。ニーズ・供給のデータすら無いのでは?というくらい希少なため、集客の強力な武器になると仮説を立てて実行しました。

さらに、キッチン前には食卓を兼ねられるハイカウンターを設置し、そのカウンター下にはゴミ箱、炊飯器、電子レンジ等が置ける大型収納スペースを用意。単なる「ファミリー」ではなく、「忙しい共働き世帯」を想定し、彼らに好まれそうな間取り・設備・家事動線を意識したのです。

 

ネットのデータと同じくらいリアルの情報も重視を

そして、結果は冒頭の通りです。申し込み頂いた皆さんに決め手を尋ねたところ、「キッチン周り・食洗機に惹かれた(全世帯中4割の女性)」「宅配ボックス全戸付き(全世帯9割)」「自分たちの求めるものが、この物件しかなかった(全世帯2割)」といった、嬉しいお声がいただけました。特に、最後の「ここにしかない」という価値がつくれたことは、綿密な調査とデータ分析による成果と言えるでしょう。

繰り返しになりますが、企画の成否は「発想力」で決まるわけではありません。エリアとニーズをくまなく調べれば、必ずどこかに成功のヒントはあるものです。時にはインターネットでの調査だけでは足りず、現地での供給物件調査や、現地周辺の不動産業者への問い合わせまで必要なケースもありますが、その苦労も将来、ローンと空室に喘ぐ苦しみに比べれば微々たるもの。根気よく「需給ギャップ」を探していきましょう。

しかしながら、ただでさえ忙しい皆さんです。調査をしたくとも時間がない、分析をしたいけれど自信がない、そんな場合にはプロの手を借りるのも一案です。信頼できる不動産パートナーと出会うことができれば、企画の相談はもちろん、その後の運営についても安心して任せることができるでしょう。

 

株式会社アートアベニューの原田と申します。弊社は首都圏の賃貸物件約7000戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。

本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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