サービス付き高齢者向け住宅の補助金・税優遇措置。投資の観点からのメリット・デメリットを考える

  • 2020/1/21
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世界一の高齢化が進む日本。これからの「超高齢化社会」では一人暮らしの高齢者が増えることもあり、政府は新たな住環境インフラを整えようとしています。

その代表的な取り組みが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」。複数の税制優遇措置や補助金を設けたことで、さまざまな場所で建設されていることをご存知でしょうか?

今、老人ホームではなくサ高住が注目されている理由と、投資の観点から考えるサ高住経営のメリット・デメリットを探ります。


サ高住増加に向けた政府の取り組みとニーズの背景

まずは政府がどのような目標を掲げているかを見ていきましょう。目標にしているのは「2030年までに60万個のサ高住を建設すること」。この目標掲げた2011年から建設ラッシュが始まりまました。

以下は、総戸数の推移のグラフです。

7年間で、戸数で言えば63倍、同数で言えば約60倍も伸びています。わずかな間にこれだけの伸びを示すわけですから、いかに注目度が高いのかがお分かりいただけるでしょう。

この爆発的な増加の背景には、政府が行った税優遇措置や補助金があるわけです。

たとえば、「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」では、建設費の10分の1、改修費の3分の1(2018年度から1戸あたりの上限額180万円)を補助することとしました。さらに、固定資産税、不動産取得税の優遇措置に加え、所得税・法人税を5年間40%の割増償却を認めるなど複数の税優遇措置を実施し、建設意欲を高めることに成功しています。

サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制
【固定資産税】
5年間 税額について2/3を参酌して1/2以上5/6以下の範囲内において市町村が条例で定める割合を軽減
【不動産取得税】
家屋 課税標準から1200万円控除/戸(一般新築特例と同じ)
土地 次のいずれか大きい方の金額を税額から控除(一般新築特例と同じ)
ア : 4万5,000円(150万円×3%)
イ : 土地の評価額/㎡× 1/2(特例負担調整措置) ×家屋の床面積の2倍(200㎡を限度)×3%
国土交通省サイトより引用

この背景には、社会問題にもなっている特別養護老人ホームの待機数の増加が挙げられるでしょう。2016年4月時点の特別養護老人ホームの待機者数は、約37万人。2015年4月に介護保険法改正が改正され、入居対象者が要介護3以上に限定されました。これにより、待機者は20万人ほど減ったと言われますが、まだまだ不足していることに変わりはありません。ちなみに、私の住む地域では、よほどの事情がない限り数年待つのが普通だそうです。何とも・・・。

また、特別養護老人ホームの基準に満たない高齢者が、安心して暮らせる住居を探している背景もあります。一般の住居では受けられない(受けにくい)サービスを活用し、高齢者やその家族が安心できる住居を探しているわけです。

では、サ高住とはどういったものなのか、老人ホームとはどう違うのか。その部分を説明していきます。

サ高住とはどういったものか?

サ高住の説明の前に、これまでの高齢者の住まいの代表的なものであった老人ホームについて説明させていただきます。

老人ホームは2種類。特別養護老人ホームと有料老人ホーム

高齢者の住む所として多くの人がイメージするのは老人ホームかもしれません。実は老人ホームには、地方自治体や社会福祉法人が運営する「特別養護老人ホーム」(介護老人福祉施設とも呼ばれる)と、法人格のある企業や団体が運営する民営の「有料老人ホーム」があります。

特別養護老人ホームは要介護度3以上でないと入居できないのに対し、有料老人ホームは一律の基準がなく、独自に基準を作っています。大きく分けて「介護付」「住宅型」「健康型」の3タイプがあり、ステージに合わせたニーズを満たしています。

特別養護老人ホームは公的な施設であり、入居基準も明確なためサ高住と同じ土俵で比較できるものではありません。そこで、有料老人ホームと比較することになります。

有料老人ホームとサ高住の違い

有料老人ホームとサ高住は、高齢者が日々の暮らしを送る場所という観点から言えば同じような位置づけに見えます。ただし、実態は全く違うもの。所轄官庁や設備基準、契約形態まで丸っきり違います。

 

サービス付き高齢者向け住宅

有料老人ホーム

居室面積 25㎡(18㎡)以上/戸あたり

(居間、食堂などが共用の場合、18㎡以上)

13㎡以上/戸あたり
設置基準 各戸にキッチン、トイレ、収納設備、洗面設備、浴室を設置。(基準を満たせば、一部共用も可) 一時介護室、看護・介護職員室等や、スプリンクラー設置など
介護サービス 外部の居宅サービスを利用可 介護付き有料老人ホームの場合は、内部のスタッフが行う
生活支援サービス 最低限、安否確認と生活相談 食事、健康管理などを提供
契約形態 賃貸借契約、またはこれに準じた契約 利用権
所轄 国土交通省、厚生労働省 厚生労働省
法律 高齢者住まい法 老人福祉法

有料老人ホームとサ高住を最も簡単に言い分けるならば、「施設」と「住まい」かもしれません

サ高住は、高齢者が暮らしやすいようバリアフリー設計がなされていて、最低限の暮らしのサポートとして生活相談や安否確認などは行っていますが、あくまでも賃貸住宅という位置づけ。建築基準法のうえでも、共同住宅のカテゴリーに入ります。

賃貸住宅ですから、高額な入居一時金などの費用は必要なく、気軽に入居できる点も利用者にとっての大きなメリットです。

介護サービスはどのように提供するのか

サ高住で提供する生活支援サービスは、どのように行われるのでしょうか。

サ高住では原則、日中にホームヘルパーや医療法人の職員が常駐し、健康管理や安否確認を行いますが、サービス利用契約を締結して実施する方式が取られます。

ただし、どの程度のサービスをどういった環境で行うのかはそれぞれの経営スタイルによるところ。事業所を併設したり、もしくは外部の事業所との提携で提供したりなどが考えられ、その内容によって賃料にも違いが出てきます。

サ高住の3つの経営方式

サ高住の経営方式には以下の3つが考えられます。

  1. 一括借り上げ方式
  2. 委託方式
  3. 自主運営方式

一括借り上げ方式では、自分で建てた住居施設をそのまま事業者に貸し出し、経営は全て一任します。地主の収益は、事業者への賃料。自身が経営に携わることなく収益が得られますが、収益は低くなります。また事業者によっては、事業の取りやめなど最悪なパターンもあるので、パートナー選びは慎重に行う必要があります。

委託方式は、入居者募集や契約などは自らが行い、介護サービスのみを外部の業者に委託する方式です。業者からテナント料をもらう方法と、入居者からサービス料を徴収し業者に手数料を払う方法が考えられます。入居率が高ければ収益も良くなる反面、入居率が悪ければ経営が成り立たなくなります。

自主運営方式では、介護事業にも参入することになります。収益性は一番高いものの、介護人材の確保など、不動産事業以外の経営をしなくてはなりません。共倒れにならないよう、慎重な取り組みが必要となります。

サ高住経営のメリット・デメリット

では、サ高住を経営するメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

  1. 補助金と税制優遇措置がある
  2. 多少立地条件が悪い土地でも活用できる
  3. 一般的な賃貸よりは高い家賃を設定できる
  4. 資産価値が高まる

通常のアパートやマンションに比べ、施設の質や事業者の質を付加価値として判断する傾向にあり、一般的に条件が悪いと言われる立地でも活用の可能性は高まります。例えば、高齢者は通勤がないため、駅までの距離はあまり重要視されません。それよりも提供するサービスを行う事業者の評判がよい方がニーズは高くなります。

また大家さんとしては、社会貢献ができるというのも大きなメリットかもしれません。

デメリット

  1. 投資額が大きい
  2. 事業者の質に左右されやすい
  3. 他用途への転用が難しい
  4. ある程度まとまった広さの土地が必要

例えば前述の委託方式の場合、ある程度の規模感がなければ提携業者は参入してくれません。そのためある程度の規模感が必要となります。その一方で、バリアフリー施設特有のスペースの非効率性や各部屋の設備から、いざという時の転用が難しいという点も大きなデメリットでしょう。

また今後、法改正や制度改正がなされる可能性もあり、外的事情により経営方針の転換を余儀なくされることがあるかもしれません。大きな可能性を秘めた事業ではありますが、一層の情報収集力と慎重さが必要だと言えます。

まとめ

最近は、建設業者が土地活用の有効な手段としてサ高住を提案することも多くなっています。税の優遇措置も考えれば魅力的なサ高住ですが、投資額が大きいことなどから簡単に参入できるものではありません。

そして何よりも大切なのは、良い建設業者と建物を建て、良い介護事業者と良いサービスを提供すること。自分一人の努力でクリアできない問題もありますので注意が必要ですが、だからこそやりがいがある事業なのかもしれません。

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