高リスクで高利回り!?再建築不可物件投資のイロハを学ぶ

再建築不可物件とは、読んで字のごとく再建築ができない物件を指します。一般的には買ってはいけない高リスクな物件というイメージがありますが、高リスクゆえの低価格で、都内23区であっても驚くほど安く購入できるのも事実です。

具体的に「どのような理由で再建築できないのか」、また再建築不可ということは、リフォームをおこなうしかないけれど、「一体、どこまでリフォームしても良いのか?」など、基本的なところからわかりやすく解説します。

 

そもそも再建築不可物件ってどんな物件?

再建築不可物件とは接道条件(※1)を満たしていない、建築確認申請(※2)がとれない建物、建て替えができない建物をいいます。

一見、幅が4mある道路に面しているように見えても、その道路がじつは水路、暗渠(あんきょ)(※3)ということもあります。

ここで一番の基本となる道路について解説します。建築基準法の道路の定義は、建築基準法の第42条に制定されています。42条には1項から6項までありますが、主なものだけを抜粋すると以下になります。

■建築基準法第42条

1項1号 道路法の道路 市区町村が所有していることが多い
1項2号 都市計画法、土地区画整理法等による道路 土地の開発許可を得て申請した道路
1項5号 位置指定道路 特定行政庁が道路位置の指定をした幅員4m(6m)以上の私道。申請はある一定の条件を満たした上で、道路の関係権利者全員の承諾(印鑑証明・登記簿謄本)が必要。
42条2項 建築基準法制定前の道路 建築基準法が施行された昭和25年に既に建物が建ち並んでいる幅員4m未満の道路を特定行政庁の指定した2項道路(にこうどうろ)もしくは、みなし道路と呼ばれている。建て替え時には2mのセットバック(道の中心線をより2mずつ後退すること)が必要
  • 参考:建築基準法道路関係規定運用指針の解説(国土交通省)
  • http://www.mlit.go.jp/common/000214472.pdf

 

たとえば、第42条1項5号道路(位置指定道路)を申請するためには、道に面する住人全員の押印が必要となりますが、一人が反対してハンコを押さないため申請ができないというケースもあります。というのも、道路にするためには角地の家は「すみきり」といって土地の角の部分をカットしなくてはいけません。面積が狭くなるうえに塀を壊して作り直すなど、余分なコストがかかるため「ハンコを押したくない」という家もあるわけです。

このように、再建築不可物件と言っても様々なタイプの物件があります。

  • (※1)接道条件 建築基準法第43条の規定により、建築物の敷地が、道路に2m以上接しなければならないとする義務をいう
  • (※2)建築確認申請 建物を建てるには確認申請書を役所もしくは民間の建築確認検査機関に提出し、建築物が建築基準法・条例等に適合しているか確認を受けなければならない
  • (※3)暗渠 地下に設けられていて外からは見えない水溝のこと

 

再建築不可物件のパターン

ここでよりわかりやすくなるように、図で説明しましょう。

図1はよくあるケースで、旗竿上の土地の竿部分が路地のように細く、2m以下である場合です。この場合は隣地を売ってもらい接道する部分を2mにするしかありません。

図2は建築法上の道路に接していないケースです。中には、2mどころか1mに満たない道路に接することもあります。

また、接道は2m確保しているにも関わらず、あえて道路申請しないということもあります。というのも本来はセットバックすれば建築可能な土地になりますが、敷地が狭いため、あえてセットバックすると建て替えられる家が今の半分くらいになってしまうこともあります。つまり、確信的に再建築不可に甘んじているケースです。都内では10坪足らずの土地も珍しくありません。再建築しないで改装を重ね、しのいで実質は再建築不可となっているということです。

図3のようにコの字形に家が並んでいる路地のケースでいうと、図3では2mの接道を満たしていないですが、他にも道路部分の権利を隣地が持っているケース(袋地)などもあります。その場合は他人の土地を通って行き来することになり、住民トラブルがおこりがちです。

まとめると再建築不可物件は下記のような土地となります。

  • 接道の幅が足りない
  • 接道している道が建築基準法上の道路ではない
  • 接道しているが土地が狭く、セットバックすると家が建てられない
  • もともと接道していない

そして、再建築不可が生まれる背景には、次のような理由があげられます。

  • 農道がそのまま生き続けた
  • 借地をいい加減に切り売りした
  • 相続の際などに不適切な分筆がおこなわれた

都心に圧倒的に多いのは、接道の幅が足りていないケースです。建築基準法の制定前、都内に畑がたくさんあったころ、農道は1.8mでした。そのため農道の幅である1.8mの間口の家が多くあります。

なお接している道路が農道である場合は、セットバックを前提に先出の2項道路と認められることもありますが、接している部分が2m以下の場合は再建築不可となります。しかし、行政によっては特例で1.8mでも申請を出せば建築可能のケースもあります。建て替えに限らず、リフォームをどこまでおこなうかについても、その行政によって見解がまちまちです。購入前に必ず確認しましょう。また、一筆の借地にいくつかの家が建っているのを、後から切り売りしたケースでは接道がないことが多いです。その他には兄弟で複数戸の戸建てを相続した際に、いい加減に分筆して売った結果、接道条件を満たさない土地ができてしまったということもあります。

 

再建築不可投資はリフォームが前提

再建築できないということは、新たに建物が建てられないということです。つまり、どんなボロボロの建物でも良いので、建物がなければいけません。そして、その建物に対してリフォームやリノベーションをおこなって賃貸に出します。これが再建築不可物件の投資法です。

再建築不可投資の種類

  • 戸建て賃貸
  • 戸建てでシェアハウス
  • 再建築不可アパート
  • 再建築不可区分所有マンション

※区分所有マンション(分譲マンション)の再建築不可とは、接道しているマンションの駐車場を管理組合が他へ転売したため、権利者がちがうといったケースもある。この場合接道している土地を買い戻さない限り再建築できない。そのようなトラブル物件を現金で買うやり方もある。再建築不可ではないが、容積率(どれだけの容積が建てられるかの規定)が改正されて、以前は建て替えが可能だったが、現在は今より小さい建物しか建てられず、実質は再建築不可となっている物件もある。

入居者から見れば、再建不可であろうとなんの関係もなく、利害もありません。再建築不可だからといって家賃が下がることはありませんし、借地とちがって地代がかからないため利回りも下がりません。新しく建物を建てることもないので、建築確認もいりません。

土地の評価が低いため、都心であっても固定資産税が安いのが特徴です。ただし、再建築不可物件には担保価値がありませんから、融資を受けることはできません。キャッシュでおこなう投資になります。なおリフォーム費用は日本政策金融公庫で借りることができます。

 

再建築不可物件の買い方

再建築不可物件と言っても特別な販売ルートはありません。投資向け、実需向け(マイホーム向け)で普通に販売しています。「楽待」「健美家」といった主要収益情報サイトはもちろん、財閥系不動産会社・電鉄系不動産会社・地場の不動産会社…どこにでもあります。

基本的に融資がつけにくいことから、マイホーム向けの戸建て住宅が再建築不可物件のほとんどをしめています。

物件情報を見ていて、妙に安いなと思えば、借地・再建築不可・既存不適格(当時は適格だったがその後に法律が変わり、既存不適格の再建築不可)であることが多く、再建築不可×借地といった組合せもあります。契約書・重要事項の説明にも必ず記載があるので、しっかり納得した上で購入することが大事です。ただし融資を引けないことが多いので、契約自体は非常にシンプルです。一般的には契約と決済は別の日におこなうものですが、現金決済ということで契約と決済が同時におこなわれることもあります。

土地については基本的に測量されているけれど、中にはされていないこともあります。「だいたいこの辺まで」と土地の境界があいまいなこともあります。じつは勘違いで、あとから「再建築不可ではなかった」というパターンもあるので、それを丹念に探していくことでお宝物件に出会えるチャンスがあります。

実際には割安な再建築不可物件は競争が激しく、現在の市況では1000万円以下では瞬殺とも言われています。つまり、不動産投資家からすると、ゆっくり調査している時間がないのです。

 

再建築不可物件のリスク

もっとも多いリスクは、近隣トラブルを抱えたケースです。旗竿地で竿部分が自分の敷地であれば、それほどトラブルはありません。水路に面している物件も水路が道路のように行き来できれば、揉める理由がないケースです。よくある揉めるケースは、出入りするために人様の土地を通らなければいけない場合です。

また旗竿部分の幅が自身の所有でも1m以下であれば、そうとうな圧迫感があり、荷物の搬入時にトラブルがおきることもあります。また、もともと隣地の借地だった場合では、ガス・水道管が隣地経由であることも多いです。リフォームしたくても他人の家の下をインフラが通っているため、なかなかできません。これも揉める原因となります。その他、再建築ならではのトラブルとして、道路が狭くて工事車両が入らないということもあります。家が密集して道路が狭い地域では、工事の資材を運んだり、トラックを停めたりするのは困難です。近隣からの苦情もいでやすく、それで余計にトラブルになります。

またリフォームコストについても、注意が必要です。再建築不可物件は古い建物が多く、中にはボロボロの建物もありますが、次のような物件は止めた方がいいと言われています。

  • 土台が傾いている
  • リフォーム費用がかかりすぎる
  • 直す価値がない物件
  • 環境が悪い(一帯の雰囲気や治安が悪い)

 

 

再建築不可物件のリフォーム

再建築不可物件は建て替えできませんが、リフォーム工事をおこなうことができます。

「柱を残せば大丈夫」などと言った話も聞きますが、実際に柱だけを残して工事をおこなえば、ほとんど建て替えと同じとなり、行政によっては新築をおこなっているとみなすこともあります。

柱だけを残す大規模工事をおこなっている再建築不可物件に対して、近所の通報で工事がストップした例もあります。厳密な基準はありませんが、一般的に再建築不可でできるのは基本的に「内装」だけで、壁を落としたり、屋根を落としたりすると、「再建築だ!」と近所などから通報される可能性があります。このあたりの判断は、各行政によるところも多く、窓口の担当者の見解もまちまちです。

一番、怖いのは先出の「通報」です。近隣の人は意外と再建築不可の物件の存在を把握しているものです。近所から通報されれば査察にきて、行政の判断で工事が停止されるリスクがあります。最悪の場合、そこで工事は中止となり、中途半端な建物と土地だけが残ってしまいます。

 

再建築不可物件投資の出口

もともと築古物件が多く、担保価値のない再建築不可物件ですが、出口はどう考えたら良いでしょうか。

基本的には現金でおこなう投資ですから、出口も現金ということになります。つまり物件価格が低ければ低いほど、売りやすい物件となります。都内の再建築不可物件投資で、出口を考えた場合は手頃な価格帯で買っておき、かつ収支がちゃんと出ている状態にしておけば問題はないと考えます。地方や転売の難しい場所なら朽ち果てるまで持ちきることも選択肢に入ります。

また、売却時には収益物件としての売却ではなくて、隣人に買ってもらうというのも一つの手です。接道が2m満たないケースでいえば、横の家と合わせることで資産価値は増大する可能性があります。どちらにしても極力安く買うこと、また既存の建物を大事にすることが重要です。

 

※本コラムは、2015年6月15日配信の満室経営プレミアムの賢人コラムから抜粋・加筆・修正したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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