日本の迎えるピークアウトとは? 時期と原因を知り不動産投資家が進めるべき対策

  • 2019/4/15
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日本国内の不動産の価値がピークアウトを迎えるのではないか、という予測があることはご存じでしょうか。ピークアウトとは、価値が天井まで上がった後、下がってくるという意味です。ピークアウトを迎えると予測されているタイミングはいくつかあります。
今回は、諸説あるピークアウトの時期とその根拠についてまとめました。今後の不動産投資を検討する上で、将来予測のひとつとして参考にしてくださいね。

 

直近に迫ると言われているピークアウトの時期と根拠

2019年と2020年は、以前から不動産の価値がピークアウトを迎えるのではないかと言われていた時期です。すでに2019年に入っていますが、不動産の価値が下がると言われている理由について説明します。

2019年問題:不動産の譲渡益特例を狙った売り抜けが集中?

2019年は、東京オリンピック前年で利益が出ている物件を売り抜けたいという投資家心理に加えて、不動産の譲渡益特例を狙った不動産売却が2019年に集中する可能性があるのでは、と考えられています。

東京オリンピックの開催が発表された2013年以降、国内外の投資家たちは、東京の地価高騰を予測して不動産を購入しています。日本の税制では、不動産を売却したときに譲渡所得税がかかります。このとき、所有していた期間が5年以上の長期の場合と短期の場合で、譲渡所得税が倍近く違います

このため、2013年から2014年にかけて不動産を購入した投資家が、ちょうど5年経過後の2019年から2020年にかけて、取得していた不動産の利益を確定するために売却を始めるのではないか、と見られているのです。

短期と長期ではどれぐらい譲渡所得税に差があるか見てみましょう。

【5,000万円で購入した不動産の価値が1億円になった場合】

5,000万円の譲渡益が出たと仮定する場合、譲渡所得税は短期と長期で以下のような違いが出ます。

  • 短期の譲渡所得税:1981.5万円
  • 所得税:課税短期譲渡所得金額×30% = 1,500万円
  • 長期の譲渡所得税:1015.75万円

ご覧の通り、長期の譲渡所得税は、短期に比べて納める税金は約半分です。大きな不動産投資をしている投資家ほど、長期所有後の譲渡特例の恩恵を受けられます。不動産の価値が大きく値崩れしない限りは、5年以上そのまま所持し続けて、税額が下がるタイミングを見計らって売却する方が得策です。

単純に東京の不動産を投資対象と考える外国人投資家は、5年以上我慢して所有していた不動産をようやく手放せる、と考えるのも不思議ではありませんね。

2020年問題:東京オリンピックの影響で上昇していたマンション価格が下落か

2020年は東京オリンピック開催年です。東京オリンピック開催が決まってからは、東京でスポーツ関連施設や宿泊施設などさまざまな建造物が作られ、東京周辺のマンション価格もそれにつられて上昇してきました。しかし、オリンピック開催後はこれまで上昇してきた東京のマンション価格も下がるのではないかと言われています

2019年の譲渡特例を使った不動産の売却も続くと見られ、東京オリンピックが終わる夏以降、不動産価格がどのように変化するか注目する人は多いのではないでしょうか。

 

まだまだある不動産価格のピークアウトと目される時期

2019年、2020年だけでなく、不動産の価格がピークアウトを迎えると考えられている時期はまだ先にもあります。2022年と2023年、2033年です。これらのタイミングには、何が起こる可能性があるのでしょうか。

2022年問題:生産緑地指定解除により宅地の供給過多に陥る可能性

2022年に不動産の価値がピークアウトを迎えるのではないかと言われている根拠は生産緑地の指定解除による大量の農地供給です。

1992年に生産緑地が指定され、農地について固定資産税や相続税が優遇される制度が取られていました。生産緑地地区に指定されると、税金面では優遇されるのですが、その土地に建物を建てることは禁じられ農地として管理し続けなければいけなくなります。

生産緑地は30年経過後の2022年から土地所有者の希望によって指定解除が可能です。土地所有者は、自治体に土地の買い取りを求めることができますが、自治体に土地の買い取り要望があまりにも多く来ると、自治体のキャパシティーをオーバーしてしまい、すべてが買い取られるとは限りません。

その結果、自治体に買い取られなかった農地は宅地として流れていき、宅地の供給過多になって値崩れを起こすのではないかと見られています。

2023年問題:日本の世帯総数が減少に転じる年

2023年に不動産の価値がピークアウトを迎えるのではないかという予想の根拠は、日本の世帯総数が減少に転じるのではないか、という予測です。国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」によると、日本の世帯総数は2023 年の 5,419 万世帯でピークを迎えた後減少に転じ、2040 年には 5,076 万世帯まで減少すると予測されています。

世帯数は、単身世帯が増え続けている影響でまだ増えているため、人口は減りつつあるにもかかわらず、必要な住戸数は増加してきました。しかし、頼みの綱だった世帯数まで減少に転じてしまうと、いよいよ需要と供給の関係が崩れ、不動産の価値が下がるのではないかと考えられています。

このように、2022年から2023年も、不動産の価格を押し下げる要因が複数潜んでいるため、不動産の価値が下落する可能性がある、と見られているのです。

2033年問題:全国の空き家率が3割を超える

少し先の話になりますが、2033年も、不動産価格のピークアウトが起こると目されている年です。この年は、全国の空き家率が3割を超えるのではないかと見られています。

現在の空き家率は、総務省の「平成25年住宅・土地統計調査」によれば全国平均で13.5%。20年前と比べると約1.8倍に増えています。さらに、先行きの見通しとして、2033年には空き家率が3割を超えるという予想も。

あまりにも空き家が増えてしまうと、空き家が荒れて住宅街の景観が悪くなったり、不法侵入者が増えて治安が悪化したりするかもしれません。その結果、不動産の価値が下がるのではないかと見られています。

 

ピークアウトに対して不動産投資家ができる対策

ここまで見てきたように、日本でこれから発生する可能性のある不動産価格のピークアウトのタイミングはいくつもあります。今後、不動産投資家はこれらのタイミングに対してどう対処していけばいいのでしょうか。

  • 都市部は空き家率も低く今後も需要が見込めるため、値下がりは買いのタイミング
  • 地方や交通アクセスの悪い不動産など今後需要が見込めるかどうかの見極めを

基本的には、「需要が見込める不動産は値崩れしているタイミングが買い時」と考えて動けば問題ありません。特に首都圏とくに都心部で交通アクセスの良い物件は、今後も十分需要が見込めます。2019年にピークアウトが来たとき、割安になっている物件があれば積極的に投資を検討してみましょう。

逆に、東京オリンピックバブルで実際の需給バランスに比べて価格が上昇しすぎていると感じられる地方や交通アクセスの悪い物件に関しては、ピークアウトが来ないうちに売り抜けを考えるべきなのかもしれません。

政府も、世帯数の減少や空き家の増加について何らかの政策を講じる可能性もあり、情勢はいつも流動的です。しかし、外的な動きだけに惑わされず、需要と供給の関係、物件の価値などを冷静に判断して、不動産投資を進めていってくださいね。

 

まとめ 

日本の不動産価格がピークアウトを迎えるとみられる時期と理由について、もう一度おさらいしましょう。

  • 2019年:東京五輪発表直後に投資目的で不動産を購入した投資家が譲渡特例を使って売却の可能性
  • 2020年:東京オリンピック開催後に上昇していた首都圏のマンション価格が下落する可能性
  • 2022年:指定緑地解除による農地の過剰供給と日本の総世帯総数が減少に転じる
  • 2033年:空き家率が3割を超え景観や治安の悪化により不動産価格下落の可能性

これらの要因は、どれも不動産価格のピークアウトを引き起こす可能性があります。不動産投資をする上では、これらの状況は念頭に置きつつ、物件そのものの価値と価格、需給バランスなどを考慮して動きましょう。
「ピークアウトを迎えたから不動産投資を控えて様子を見よう」という慎重さも大切です。しかし、掘り出し物の物件が出てくるかもしれないと考えて、投資を検討するタイミングを検討してみてはいかがでしょうか。

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