家賃保証契約をしたはずなのに、実際には3ヶ月のみ。それを過ぎたら無保証状態!
家賃保証会社に加入しているはずが、知らないうちに無保証だった!?
大手仲介業者による契約で、無保証人状態で入居させてしまった専業大家の芳賀さん。その後、入居者の家賃滞納トラブルがあり、そのすべてを自身で解決するしかなかったそうです。
一体、なぜそのような事態になってしまったのでしょうか。その背景を探ってみます。
なお、この記事には、プロによる保証会社の賢い使い方があります。(リンク)
大家さんプロフィール:芳賀義久さん(仮名)
元サラリーマンで7年前に退職して、現在は専業大家さん。7棟73室を神奈川県内に所有。その内、54室を親から相続し、それ以外を自分で買い進めている。物件はすべて自主管理をおこなっている。
「家賃保証をつけました」と言われて契約をした
――まず、芳賀さんの大家歴を教えてください。
私は神奈川県を中心に物件を所有しています。現在、7棟73室を所有していますが、その内、親から54室を相続しました。それ以外は自分で買い増やしています。サラリーマンは7年前に退職しており、今は悠々自適な専業大家さんをしています。
――どのような管理体制で運営されているのでしょうか。
私の場合、管理会社に委託をせずに、自主管理でおこなっています。そのため、客付については、客付をいろいろな賃貸仲介会社でお願いしています。いい訳になってしまうのですが、これまで自主管理をしてきて、M以外はそういうトラブルはありませんでした。
基本は保証人をつける、いなかったら保証会社に加入いただく……それが大前提です。その方がトラブルはありません。家賃が遅れたら、家賃保証会社に連絡して督促してもらったことがありますが、それ以上のトラブルになったこともなかったのです。
――どうして今回、保証会社に加入していない事態になったのでしょうか?
ことの発端は入居申し込みのあった単身の入居者さんに事情があって、保証人がつけられなかったのです。珍しいとも言われますが、私の場合はほとんどの入居者に保証人がいて、保証会社を使うケースはごくまれだったのです。とりいそぎ、保証人がいないということで、「保証会社をつけて欲しい」と大手仲介業者Mにお願いしました。そして「家賃保証をつけました」という報告を受けました。その保証というのが、「Mサポートシステム」というものでした。
家賃保証は3ヶ月。それ以降は無保証状態だった
――具体的にはどんなに契約内容なのでしょうか。
これは、Mによる3カ月間の家賃保証であり、従来の家賃保証会社による保証とは似て非なるものです。3カ月経てば保証は消えますから、まさに無保証状態です。このMサポートシステムの契約書は、普通借家契約書と共に受け取っていましたが、内容をしっかり確認していませんでした。これは私の落ち度です。
――滞納家賃はどうなりましたか?
そもそも、この入居者さんはずっと何の問題もありませんでした。実際にトラブルがあったのは1年以上後のこと。入居者は2015年7月に入居して、1年以上はしっかり払っていて、2017年2月から滞納がはじまったのです。
家賃の滞納がありMに電話したところ、「家賃保証をしているわけでない」という話で、そこではじめて無保証状態であることに気が付いたのです。幸いなことに、入居者さんと直接、家賃を分割で支払ってもらうよう交渉は済んでいます。それでも、今もなお無保証であることは変わりません。正直、困っています。
そもそも、3カ月間の家賃保証を家賃保証協会の契約と同じ呼び方をするのがおかしい
――なぜ、このようなことが起こったのでしょうか?
大家としての常識でいえば、家賃保証会社の契約と、Mが独自で行っている3カ月間の家賃保証を同じように「家賃保証」と呼ぶのはどうかと思います。大家である私が「家賃保証を付けて欲しい」と言ったにもかかわらず、それが3カ月の保証だと認識する営業マンもありえないように思えます。
いずれにしてもMの営業マンの言葉だけを信用してしまったのが私の落ち度です。入居希望があったときに、Mの営業マンは「家賃保証がつきます」と言いました。それを鵜呑みにしてしまったのです。契約書もしっかり読んでいませんでした。だから自己責任ではあるのです。
――たしかに「家賃保証がつく」と言われれば、まさか3カ月間だけとは思いません。
家賃保証が付く=家賃保証会社に加入している、そう思い込んでしまったのが失敗の元でした。てっきり、家賃保証会社に加入済だとばかり思っていたら、結果そうではありませんでしたから。
賃貸借契約書とは別に保証会社の契約書があるものです。それをきちんと確認していませんでした。それに保証会社との契約金は入居者が払うものという認識で、おそらく入居者が払っているだろう、と考えていたのです。
――Mには、これまで仲介してもらった経験がなかったのですか?
たまたまですが、なかったのです。トラブルが起きて、Mに問い合わせたところ、こういった質問になれているのか、よどみなく返答がありましたし、なんら悪びれている様子はありません。Mからすれば、広告料の代わりにMサポートシステムを付けているのだと思います。これで保証会社がきちんとついているなら問題はありません。3カ月だけの家賃保証を指して、「保証がある」と説明するのは問題があると思います。3カ月だけと知っていれば、「ちゃんと保証人を立てて欲しい」、「保証会社をつけてほしい」としっかり言っていたと思います。
これはすべての客付会社にいえることですが、申込み時点ではどういう保証会社に申込んでいるのかわかりません。そして、保証会社の審査に通ったことは知らされますが、それも、会社名をいうことはありません。
契約書はしっかりと見るべき。意外な落とし穴があることも
――読者の皆さんに伝えたいことは?
今回のケースについていえば、自業自得のところもありますので、大家さんたちには「契約書はしっかり見るべき」と注意喚起を行いたいです。
――あと、ほかにはアドバイスはありますか?
これはMではなくて、一般的な家賃保証会社のケースですが、滞納が始まってすぐに本来は保証会社に事故報告をしなくてはいけません。それを伝えるべき日数も契約で決まっています。それが、入居者から「待ってください」といわれて待っているうちに、免責の期間すぎてしまうこともあります。「保証会社にはいっているからOK」じゃなくて、保証の内容をしっかり見た方がいいと思います。
――保証会社によっていろんな契約内容があるということですね。
その通りです。家賃収入が振り込まれると安心して思考停止になってしまう大家さんは多いと思います。これは管理会社に任せている人でも確認しておいた方がよいと思います。
というのも、管理会社が本人に連絡をとろうして免責期間をすぎてしまったことがあると聞いたことがあります。滞納していることがわかった日に、事故報告をあげなくてはいけません。
また、複数の保証会社と付き合いがある場合、保証会社から連絡がくるケースもあれば、全く連絡なしのところもあります。前提としては、入居者さんと大家さんが直接話して家賃を督促するような事態にはならないようにしていることが多いです。それは、保証会社のやり方に寄るので、準じた方がいいと思います。
合わせて、プロによる保証会社の賢い使い方のアドバイスをご覧ください。(リンク)
※本コラムは、2017年5月15日に配信された「満室経営新聞」を抜粋・加筆・修正したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。