満室経営新聞プレミアムの裏話(月額課金サービスというビジネス)

  • 2018/11/16
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「不動産投資」は事業のひとつです。中には、サラリーマン兼不動産投資家という方もいらっしゃると思いますが、不動産に携わることで、ビジネスマインドに変化があることもあるでしょう。さらに、今すぐにというわけではくても、リタイアを実現したあとに、自分でも…と考えていらっしゃる方もいるでしょう。

私は、不動産もビジネスも、爆発的な成功をしているとは到底言えませんが、ひとつのサービスを10年以上継続できています。それがネットで不動産情報を提供する「MSP」です。

この間も、似たような会員制度が多く生まれてては消え・・・を繰り返していることを考えると、決してたやすいことではないことがお分かりいただけるでしょう。今回は、その実績やこれまで行ってきた工夫をご紹介させていただければと思っています。

 

失敗しにくい事業の共通点

今やもう、事業をするのに多額の元手が必要な時代ではありません。会社だって資本金制限はありませんし、インターネットをはじめとする通信インフラのおかげで、場所の制限もほぼなくなっています。

もちろん、ビジネスに絶対成功するノウハウというのはありませんが、そういった恵まれた時代を活かした「失敗しにくい事業体」というのは存在します。

  1. 仕入れや多額の資金(準備金、運営コスト)が不要であること。
  2. 利益率が高いものであること。
  3. サービスが容易に複製できるものであること。
  4. できれば、継続的に売上げが得られる種類の事業であること。
  5. 強いUSPが確立でき、価格競争に巻き込まれないこと。

こんな感じでしょうか。

そういう意味で、不動産投資は3と4を満たしています。

一方、飲食店やコンビニのフランチャイズは、ほぼどれも満たしているとはいえません。このことから見ても、「失敗して廃業する割合が違う」ということが当然です。

ちなみに、「MSP」は仕入れる商品や原材料がありません。電子媒体なので原価が低く複製も容易ですし、月額の会員サービスなので継続的な売上げがある程度確保されています。不動産投資家の方を対象にした勉強会などの会員サービスは他にもありますが、ぼくや松田さんの収支を公開している媒体はありません。

そういう意味では、規模は小さくても1~5の要素を全て満たした「失敗しにくいビジネスである」ということはご理解いただけると思います。

 

月額課金サービス 3つのタイプ

では、次に月額課金サービスというカテゴリーについて考えてみましょう。

こういった事業をおこなっている会社はたくさんありますが、パターンとしてはほとんど以下の3つ(またはその複合体)に集約できます。

  1. 会員に対してコンテンツを提供するもの
  2. ツールや施設の利用権を与えたり、メリットのある地位を提供するもの
  3. 会員が集うコミュニティの参加資格を与えるもの

「MSP」は1の要素が強く、3が少し含まれているような事業ですね。今後は3の要素がさらに強化されることは先に述べました。新聞や雑誌の定期購読も1のカテゴリーですし、コンサルティングや士業の顧問契約なども、広い意味ではコンテンツを提供していると言えます。

2の事例としては、不動産協会に加入した宅建業者がレインズ(REINS)の閲覧ができる…というのが分かりやすいと思います。不動産投資のシミュレーションソフトを月額課金で提供されている方もいますし、フィットネスクラブのような施設もこのカテゴリーですね。

3は簡単です。大家さん系の勉強会の多くは、前半でセミナーをやってその後は懇親会という流れになっていますが、多くの方が懇親会の方を楽しみに参加していることは周知の事実です(笑)。コンテンツではなく、コミュニティなのです。

次に、それぞれのメリットとデメリットについて比較してみます。

 

メリット

  1. 自力でサービスを提供し続けられるため、他人、他社による影響を受けにくい。
  2. うまく行けばコンテンツを制作し続ける必要がなく、手間のない運営ができる。
  3. 紹介による売上増が期待しやすい。会が自走すれば不労収入の可能性も。

デメリット

  1. 魅力あるコンテンツを制作し続けるのは大変。量が少ないと飽きられるし、多すぎても消化不良を起こした会員から不満が出る。
  2. ツールやライセンスの独自性がなくなった瞬間、一気に崩壊する。
  3. 不良会員によって会が荒らされてしまうなど、自分のコントロールが効きづらい。

ここで補足説明が必要なのは、デメリットの1でしょうか。

例えば、数値換算で100の量があるコンテンツを提供している、月額課金サービスがあったとします。ここで制作者側がより魅力ある会員制度にするために頑張って、数値換算で200の量にコンテンツを倍増した上に価格は据え置きで提供をしたとしましょう。

大半の会員は「サービスの質が上がった」とプラスに受け取りますが、情報リテラシーの低い一部の会員は、提供されるコンテンツが消化できない(読み切れない、観きれないなど)という理由で「サービスの質が下がった。価格に見合わない」という間違った判断をしがちです。

500円で販売されている雑誌を読むという事例でいうと、「全部を読んだ訳ではないけど、500円分以上の情報が得られたので次号も買おう」と判断するのがリテラシーの高い読者で、「半分しか読めなかったので、250円の価値しかない」と判断するのがリテラシーの低い読者です。

しかし、どのサービスにも一定の割合でリテラシーの低い顧客は混じっていますので、提供側としてはコンテンツを充実させて良いものかどうか迷うことも多いのです。

だって、無料の満室経営新聞でさえ「読み切れない」という理由で購読を解除する人がいるくらいですからね。

 

とにかく続けることが大事。だから続けられる仕組みで

「MSP」は元々、「大家の財布の中身レポート」という名称でサービスを提供していました。発足当時は運営メンバーもサラリーマンでしたので、3の勉強会方式を採用して面倒なことになったら困るというのと、当時から日本最大の大家さん勉強会である「大家さん学びの会(http://ooya-manabi.com/)」の会員でしたので、会員でありながら同じようなサービスを提供すべきではないという考えから、1を中心に他では真似できないコンテンツを提供しようと考えました。

とはいえ、不動産をちょっと持っているくらいの大家がコンサルティングをする訳にもいかず、出せるものとしては「今まさに頑張っている自分たちの姿」ではないかという結論に至ります。

当初は会費こそ今より安かったものの、「レポートの執筆メンバーはぼくとコテツさんのみ」「保有物件数は2人合計でわずか5棟」という情けないものでした。でもこの頃は大規模な大家さんがさほど多くなかったということもあり、それなりの購読者数をキープできていました(もちろん、今よりは全然少なかったですが)。

コンテンツの量も少なかったので、レポートとコラムを添付ファイルで個人のアドレスから直接送信していました(プロバイダから怒られたこともあります)。今では、レポートのレイアウト調整や音声・映像の編集を、専門の業者さんに委託していますが、創刊後5年くらいは自分で全部やっていました。

当時は平日の帰宅が10時過ぎになるようなサラリーマンでしたが、当然このような作業を業務中にすることは許されず、睡眠時間を削って続けていたという訳です。

 

月額課金サービスで大事なことは、「続ける」ということです。先ほど説明したように、サービスの提供自体にコストが掛かる訳ではないので、執筆や配信の労力さえ惜しまなければ、会員数が極めて少ない状態でも、金銭的にサービスが提供できないといことはありません。

そして、価値のあるものを出し続けてさえいれば、そのうち売上は上がっていきます。売上げが増えても手間はほとんど変わりませんから、内容の充実にリソースを向けることもできます。

こういったサービスのスタート当初に会員になってくれるような人は、いわゆる「コア層」の優しいお客さんであることが多いので、そういう方に支えられながらサービスそのものの価値を上げていくのです。何年かあとで振り返ってみると恥ずかしくなるような商品であっても、当初は、それなりに価値を感じて購入してくれた人がいる訳ですし、その段階を経ずして、最初からピカピカの制度を作るのは極めて難しいですね。

これまで、執筆メンバーのひとりが急に離脱したり、1千人規模のイベントの翌日が配信日であったりと大変な時期もありましたが、創刊130号を経過した今でもレポートの発送を休んだり遅延したことは一度もありません。

見栄えよりも、効率性よりも、続けることが大事ですね。

 

MSPのリニューアル!

さて、その後、「MSP」はリニューアルされ、「満室経営新聞プレミアム」となりました。

単に媒体が変わったのではなく、交流イベントを増やしました。VIP会員さん向けのセミナー収録会を行い、VIP会員さんが参加無料できるようにしたのです。もちろん、その映像や音声は配信しています。一般会員の方も、参加費をお支払いいただければ収録会に参加いただけるようにしました。

そして、年末のみに開催していた交流会を「大交流会」に格上げし、有料会員さんだけが参加できる交流会を増やしました。年間4~5回程度の開催をし、そのうち1回は地方で開催。運営メンバーや著名大家さんをお呼びして、質の高い情報を提供できるようにしました。

また、これまでVIP会員の方のみに提供していたスペシャルコンテンツ(セミナー映像や音声)のダイジェスト版を、一般会員の方にも配信。VIP会員へのランクアップも随時可能にすることで、「続きが観たい!聞きたい!」という人が会員かできる仕組みを作りました。

さらに、VIP会員さん限定で、運営メンバーとのダイレクトなやりとりができるようにし付加価値を持たせました。「LINE@」のサービスを利用し、会員さんとのリアルタイムのコミュニケーションを可能にしました。ちょっとした質問であればすぐに返信できたり、ネットに出せない情報をクローズドで提供することができるようにしています。

このようにして月額課金モデルを確立し、現在も継続しています。

ご興味のある方は参加できますので、いつでもご連絡ください。

 

*この記事は、2016年9月に「MSP」会員向けに発行されたコラムを不動産の学校編集部がリライトしたものです。

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