あこがれの古民家を楽しむには賃貸がいい!【移住の注意点も紹介】
会社員生活にピリオドを打ち、あこがれの古民家で生活を始める方が多いです。過疎化や限界集落の問題があり、各地の自治体で若者への誘致も盛ん。月々少額の家賃で住めることが魅力です。しかし、生活を支えてきた会社を退職することは勇気がいります。家族がいるなら、なおさらです。
今回は、田舎の古民家で生活をする際の注意点と、賃貸の古民家を探す方法を紹介します。
古民家とは築50年以上の日本家屋
日本建築の中でも、かなりの築年数が経過した民家を指します。明確な定義はありません。
一般的には、
- 伝統的な日本建築
- 木や土など自然のものが使われている
- 築年数が50年以上
という3つの条件を満たしたものが、古民家としてカテゴライズされます。
50年以上というのは、国の文化財登録が50年以上たっていることを条件にしていることから。ただ、「古民家」は基準があいまいなので、50年以上たっている民家を解体し、材料として使われた古民家に似せた家も古民家と表現することがあります。
間取りについても決まりはありません。
古民家は大別して、
- 田舎に多い農村民家:土間や馬屋がある
- 町の中の町民民家:間口が狭く、奥行きがある
- 武家民家:重厚な造り
- 庄屋屋敷:集落の有力者が住んでいた家。農村民家よりも大きい
以上の4タイプに分かれます。
古民家がなぜ人気なのか?
古民家は家の広さの割に家賃が安く、人気です。
そして、町よりずっと不便な田舎でも若者が住み始めています。
その理由は、
- 就労支援が増えてきたこと
- 価値観が変わってきた
この2つの理由が見えてきました。
理由1:地方財政・JAにゆとりがあり、就労支援もできている
古民家が大きく取り上げられるようになる前にあったのは、廃校を利用した創業支援でした。
ネットショップが一般的になり、街中に店を持たずとも商売がなりたつようになったことも1つの理由です。サラリーマン収入よりは減りますが、ストレスから解放され、自分らしく働いていけるのは何よりの魅力。
その他に、地方財政やJAに資金力があり、移住希望者ひとりひとりに手厚く支援できるところもあります。
理由2:不便を楽しむ!価値観が変わってきた
就労支援の次に目をつけたのは人口増加です。提供できるものは古民家。
住民から様々な意見はありましたが、実際に住んでもらうと
- 懐かしさを感じる
- 自然の中で生活しているようだ
- ノスタルジックさがおしゃれ
と、好評でした。
長年放置された古民家も多く、大なり小なり修繕は必要ですが、その手間がかかることも魅力の1つに感じられているようです。
賃貸の古民家も家賃は安く、好きに直していいものがあります。賃貸でありながら自分好みにしていけるのもうれしい1つ。
バブルがはじけ、低景気の中で成長してきた世代にとっては、単なる消費的な生活よりもリノベーションした住環境に魅力を感じる方は少なくないようです。
田舎への本格移住に待った!ほとんどの人が失敗する現実
お金を持っている組織も乗り出してきて、完全移住を勧めてきています。
説明会もあり、移住者の体験を聞くといいことずくめ。残業続きで子どもに構ってやれない罪悪感がこみ上げてきます。
でも、ちょっと待ってください。
日曜日にテレビで放映されているような「幸せに暮らしている移住者」は、ひと握りなのです。
郷に入って郷に従わなかったら孤立した一家
移住者の話を聞くと必ずあがるのは、「野菜を持ってきてくれる」「まわりの人はいい人で、困っていると助けてくれる」です。
外から入ってきた人に対して受け入れ態勢があるところはいいのですが、全てがそうではありません。移住してきた人を「異端者」として排除しようとする住民もいます。
過去にはこのようなケースもありました。
両親は70代、息子である自分は40歳(独身)。街の中に住んでいましたが、持ち家を売却して、その資金で田舎に古民家を購入し、完全移住をしました。
生活費は貯蓄と両親の年金、そして農家の住民のもとでアルバイトをすることに。
住人たちは優しく一家を迎え入れてくれました。絵に描いたような田舎での生活です。が、1つ気になる点がありました。それは、水の利用代です。通常の水道料金とは別に、村長から徴収されていたのです。
金額は数千円ですが、何に使われているのか分からずに支払いをやんわりと拒否しました。
そうしたら、優しかった住民たちから無視をされるように。アルバイトをしていた農家からは、「あんんたたちに肩入れすると、うちまで悪く言われる」と出入りを断られました。
まだ一家と口をきいてくれる住民から、水の利用代は、もともとは田んぼの管理代だったことが分かりました。時代は変わり、今では集落の美化活動や住民同士の飲み食いに使われていたのです。
そんなローカルルールを断ったことから始まった村八分。台風のときなどは住民が協力し合いながら対策するのですが、一家に手を貸してくれる人も、こうしたらいいとか教えてくれる人はありません。
結局、古民家を捨てて街に逃げ帰りました。引っ越しなどで貯蓄は底を突き、アパート暮らしをすることに。
無計画で資金が尽きて一家離散
私の友人の家では梨を育てていて、季節になると持ってきてくれます。
しかし、友人の家業は専業大家です。梨のことを聞くと、過去に古民家と畑を貸した人が勝手に植えたとのこと。
当時は畑に樹木を植えられてしまい抗議したそうですが、畑も家も借り続けるし、梨で生計を立てていくとのことで追い出しはしませんでした。
でも、梨は実がなるまで5年はかかります。しかも、樹木を育てるのに本来は適しない畑に植えるような人がやったこと。うまくいくはずはありませんでした。
結果的に一家は夜逃げ。伐根するために弁護士に相談したら、彼らの親族が対応しました。そして、父親は蒸発した旨を伝えてきました。他にも借金を抱え、親族たちも疲れ切っている様子……。
やり切れない思いで残った梨の木に罪はない。友人一家は数百万円をかけて土を替え、梨を育てることにしました。今では収穫シーズンになると人を雇うほどの量になったとのこと。
新しい生活をするなら、それに見合った資金と知識を身に付けてからにしましょう。
移住者の話は「うまくいった人の話」でしかない
私はかつてJAに勤めていました。農業支援とは違う部署にいたのですが、移住希望者たちに紹介される人はいつも同じ人でした。
希望者たちの参考になりそうな移住者は他にもいるのだから、あと数人紹介すればいいのに……と思っていたところ、上司からは「希望者たちが夢見る生活をおくれている移住者は彼だけなんだ。私たちは住民を増やすことが目的なんだから、移住の現実を教える必要はないんだ」とのこと。
移住者の話は、あくまで「うまくいった移住者の話」でしかありません。移住者を紹介した組織は、住民が増えることで得をする組織です。
紹介された移住者の大半は、「うまくいった体験談」や「移住希望者に魅力的に聞こえる失敗談」をすることで謝礼金を受け取っています。全てを信用しすぎないことをおすすめします。
ハードルは低く、安全性は高く!賃貸で週末だけの古民家暮らし
田舎への完全移住は、誰も教えてくれないローカルルールを守ること、まとまった資金があることが条件です。でないと詰みます。
古民家をカンタンに楽しむ方法は、家賃5,000円~2万円程度の古民家を借りて週末に通うことです! 子どもは転校させない、仕事も辞めることありません。
- イメージと違った
- 不便すぎる
- 家族から不評だった
そんなときも、賃貸だからこそ、すぐにやめられます。
賃貸で週末だけ古民家を楽しむ→長期休暇を古民家で過ごしてみる→自分だけ仕事を辞めて移住してみる→家族を呼ぶという、段階を踏んでの移住も可能です。
自分にピッタリの古民家の探し方
1.空き家・空き地バンク
画像出典:全国番空き家・空き地バンク https://www.akiya-athome.jp/
不動産会社で古民家を探すのもいいですが、さまざま々な物件を見られるのは自治体も参画している空き家・空き地バンクです。買いの物件の方が多いですが、賃貸も掲載されています。
地域にもよりますが、家賃~3万円でも戸建てがヒットするのでおすすめです。
中には賃料が公表されておらず、相談となっている古民家もちらほら……。町で管理している古民家も多いようなので、お話を聞いて、自身の要望を伝えることから始めてみてはいかがでしょうか?
2.住んでみたい自治体に相談してみる
公営住宅が空いていることもあります。ホームページに情報が載っている可能性もあるので、探してみましょう。
自治体によっては、過疎・高齢化対策として人を積極的に受け入れているところも!
画像出典:大分県由布市(PDF)
こちらは、私が移住を悩んでいる大分県由布市の市営住宅の募集一覧です。残念ながら物件は団地で古民家とは違いますが、資金力のある地域ではもっと魅力的な家が用意されていることでしょう。
また、人や仕事の紹介をしてくれるかもしれません。ただし、大規模に誘致している自治体から紹介された場合は注意しましょう。うまくいった人1人に対し、失敗した人は数知れずです。うのみにするのは危険です。
まとめ
今回の記事は夢を壊すようなことを言って申し訳ない思いです。でも、希望を持って古民家に住むことでしょうから、失敗してほしくありません。
まず、賃貸の古民家を探すためにはネットを活用するか、地方自治体に問い合わせることをおすすめします。次に、コミュニティの中にはローカルルールが存在することを知っておきましょう。できることなら、ルールを教えてくれる人を見つけておくといいですね。無理なく夢の古民家生活を楽しんでいきましょう!