待望の「大規模修繕積立金共済制度」の活用で、お得に計画的に将来に備える
- 2022/1/24
- 不動産投資
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修繕積立金の共済制度がはじまる
金額が大きい大規模修繕工事は、賃貸経営をする上で心配事のひとつです。
国交省が2017年に実施した「家主アンケート調査」によれば、長期修繕計画を作成し、計画的な修繕を実施している大家さんは約20%に留まるとのこと。実際に管理実務をしている我々から見ても修繕計画を実行できている大家さんは少数派で、修繕する気はあるものの費用が多額で踏ん切りがつかない大家さんや、本当にお金がなくて修繕ができない大家さんもいらっしゃいます。中には、修繕をためらっているうちに建物で雨漏りが発生したり、設備が故障したりで、入居者に損害を与えてしまった事例も…。
国や業界団体は以前からこうした状況を改善しようとしており、さまざまな視点から解決策を模索していましたが、2021年11月、いよいよ「修繕積立金の共済制度」が認められました。これを提供するのは全国賃貸住宅修繕共済協同組合で、この団体は全国賃貸管理ビジネス協会、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会、公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会の3団体が協力して立ち上げたものです。今後、3団体に加盟する管理会社から代理店を募り、代理店が窓口となってオーナーに共済を普及させていく予定です。
建物維持と節税とが同時に叶う一方、ハードルも
まだ始まってみないとわからない部分も多いのですが、共済の誕生は大家さんの経営方針や資金計画にも影響を与えそうです。メリットと注意点を確認しましょう。
◆メリット
1.共済掛金を「経費」にできる
最大のメリットは、修繕のための積立金を経費化できるようになることです。
これまで修繕積立金は、大家さんが個々の判断で「預金の積み立て」で用意するしかありませんでした。しかし、この積み立て分が「共済掛金」に置き換わり、それが損金算入できるとなれば、大家さんには節税のメリットが生まれます。
たとえば10年後に1000万円の外壁・屋根工事を行う計画の場合、共済を利用すれば毎年100万円の掛け金が経費化できることになります。この大家さんの所得・住民税率が30%としたら、100万円×30%で毎年30万円、10年間で300万円の税負担軽減が叶うことに。とても大きいですね。
2.計画的な修繕がしやすくなる
今のところ、共済に加入するには「長期修繕計画」を作成する必要があるとされています。計画を立てざるを得ないわけですから、将来の修繕が実行しやすくなるのは言うまでもないでしょう。
◆注意点
1.共済加入には「長期修繕計画」の作成が必要
一方で、その「長期修繕計画の作成」が簡単ではない点には注意が必要です。修繕計画の立案はそれなりに負担のかかることですし、そもそも修繕・メンテナンスの知識を持ち合わせていない大家さんも多いでしょう。
共済制度誕生を喜ぶ一方、大家さんの知識不足・修繕計画作成の負担が足かせとなり、制度利用が進まないことが業界内でも懸念されています。自信のない大家さんは、知識のある工事会社や管理会社に協力してもらい計画を作成することがお勧めです。
2.対象が「外壁と屋根」に限られている
長期的な観点から修繕を計画すべき設備は多々ありますが、現時点では、共済の対象となる工事は「外壁と屋根」に限られています。それ以外の設備工事、たとえばエレベーターや受水槽、給排水管、エアコン、給湯器といったものは対象外ですので、これらの将来の修繕に備えるには従来通りの資金確保策が必要です。
ただし、業界団体からは対象工事範囲を広げる要望がでていますので、今後の対象拡大に期待したいところです。
節税メリットを活かし、お得に計画的に大規模修繕を
この共済が実現すれば、これまで作成していなかった長期修繕計画が手に入り、節税をしながらお得に将来の修繕費用を準備できるようになります。計画的で安心・安全な賃貸経営に役立ててみてはいかがでしょうか。
筆者:(株)アートアベニュー石井
弊社は首都圏の賃貸物件約7000戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。
株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/