【連載】収支を安定させる意外なアイデア。生活保護受け入れのメリット・デメリット

  • 2021/9/13
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近年、生活保護を受給されている方から入居希望のお問い合わせをいただくことが増えたように感じます。当社で管理している物件のオーナー様からも、「生活保護受給者から入居申し込みがあったがどうするべきか」とご相談をいただくことが多くなりました。

厚生労働省発表の政府統計を調べてみると、令和3年1月時点での生活保護受給者は約164万世帯・205万人。平成4年時の58万世帯・90万人と比べて、世帯数で約2.8倍、人数で2.2倍にも増加していることが分かります。

増加するニーズを捕まえるのは経営の鉄則ですが、果たして、生活保護受給者という層を取り込んで問題はないのか。今回は、生活保護受給者を受け入れるメリット・デメリットを確認していきましょう。

逆に収支が安定する!? 生活保護受給者に部屋を貸し出すメリット

生活保護費は、就労することが難しいなどの理由で、収入が厚生労働省の定めた一定の水準に満たない状態と認められた方に支給されています。たとえ稼働率が上がるとしても、収入が少ない方に部屋を貸し出すとなれば、漠然とした不安やネガティブなイメージを抱かれる方もいらっしゃるでしょうし、まず家賃滞納を心配される方が多いのではないかと思います。

しかし実際は、生活保護受給者の家賃滞納は皆さんが想像されるほど多くありません。なぜなら、支給される生活保護費には住宅扶助が含まれており、これが家賃の支払いに充てられるようになっているからです。

更には、本人に代わって役所から直接家賃を振り込んでもらうようにすることができる「住宅扶助費等代理納付制度」を利用することで、『入居者が住宅扶助を生活費や遊興費に使ってしまって家賃が払えない』という事態も回避できます。そうなると、むしろ生活保護受給者のほうが、一般の入居者よりも滞納リスクが低くなるほどです。

また、生活保護受給者は長期間の入居となる傾向が高く、これも収支の安定につながります。現行制度では引越しにかかる初期費用が支給されず、また生活保護受給者を受け入れるオーナーがまだまだ少ないために、生活保護受給者はそう易々と引っ越しという選択肢をとりません。結果として、生活保護受給者の受け入れには、『滞納リスクの低い入居者が長期に渡って住んでくれる』という賃貸経営上の大きなメリットが生まれるのです。

原状回復費用の回収は難しいケースも。保証や保険でリスクヘッジを。

一方で、デメリットや注意点がないわけではありません。

まず、退去時の原状回復費用の入居者負担分が高額になった場合、かなり回収が難しくなります。通常であれば、退去者が費用を支払わない場合、法的な手続きを踏むことで給与等を差し押さえることができますが、生活保護費は給与と違って「最低限の生活を送るためのお金」という性質のため、いくら未払いがあったとしても差し押さえることができません。役所がなんとかしてくれるのではと思われる方がいるかもしれませんが、残念ながら役所はノータッチ。家賃を支払う以外のことはやってくれないのです。

対策としては、保証会社や管理会社の「保証」の利用が効果的でしょう。こうした会社の中には、家賃だけでなく原状回復費用まで保証するサービスを展開しているところがあります。ちなみに当社では、家賃や原状回復費用に加え、万一の際の明け渡しにかかる費用まで保証しております。

また、前出の政府統計によれば、生活保護を受給している164万世帯のうち、約半数の83万世帯が「単身の高齢者」であるとのこと。身寄りのない場合も多いため、必然的に室内での孤独死リスクが高まる点は要注意です。事故発生時も原状回復の件と同様、役所のサポートは見込めません。孤独死保険の加入や見守りサービスの導入によるリスクヘッジが必要でしょう。

コロナ禍の影響もあり、最近なかなか部屋が決まらないとお悩みの大家さんもいらっしゃるかと思いますが、生活保護受給者へのターゲット拡大は、社会貢献をも兼ねる有効な空室対策と考えます。メリット・デメリットを正しく理解し、経営に活かしていただければ幸いです。

筆者:(株)アートアベニュー 安藤
弊社は首都圏の賃貸物件約7000戸をオーナー様からお預かりし、不動産管理に経営者思考を取り入れた「プロパティ・マネジメント(不動産経営管理)」を行なっている不動産管理会社(PM会社)です。本連載では、PM会社ならではのノウハウ、業界のリアルな裏話などをご紹介していきます。

株式会社アートアベニュー
プロパティマネジメント(不動産経営管理)の草分け的存在として業界からも評価される不動産管理・コンサルティング会社。日常の経営管理業務のみならず、オーナーの投資目標に合わせた売買・組替相談、不動産財務分析、建築企画、相続支援等もおこなう。代表の藤澤雅義氏は、日本でのCPM®(米国不動産経営管理士)を認定するIREM JAPANの2003年度会長。
http://www.artavenue.co.jp/

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