賃貸の退去費用は高すぎる! 借主はどこまで負担すべきか?
- 2019/10/18
- 賃貸
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転勤や引っ越しで賃貸から退去する際に気になるのは、いくらかかるかわからない退去費用ではありませんか? ほとんどかからなかったという人もいれば、数万円~数十万円を請求された人もいます。長年住み続けて部屋が汚れていると、請求が怖くて引っ越しを切り出せないことも……。
今回は、賃貸の退去費用の負担について解説します。
退去費用とは、借主が故意や過失で損傷をあたえた部分の修繕費
賃貸を出るときにかかる「退去費用」とは、部屋を借りた当時の状態に戻すための費用です。
戻すとはいっても、1から10の全てではなく、借主の故意・過失で起こったところのみにかかります。
たとえば、
• 子供がつけたフローリングの大きなキズ
• 物をあてて壊してしまった壁
など、一般的な生活をしていてつかないキズなどを退去費用で直します。
壁紙の黄ばみのような経年劣化で起こるものは、本来は対象外なのです。
• フローリングの色褪せ
• 壁紙の黄ばみ
• 壁のがびょうの痕
といった普通の生活で起こるものに対して退去費用を取られるのは、本来であれば間違いなのです。
退去費用の相場は地域や修繕を依頼する業者に左右される
退去費用の相場はピンからキリまで。お住まいの家賃や修繕を依頼する業者の価格にもよります。
最近はゼロゼロ物件(敷金と礼金を入居時に納めない物件)が増えてきたとはいえ、ほとんどの物件では入居をする際に敷金を納めています。敷金とは、いわば退去をするときの原状回復に使う費用の前払いであり、賃貸の保証金のようなものと考えてよいでしょう。一般的に、納める敷金は家賃の約1か月分です。
つまり、退去をするときの修繕費として入居時に前払いをしているのが敷金なわけですから、いざ転居をして、修繕費用が下回ったときには余分だった敷金は戻されます。
税法的にも「敷金を収益には含まない」とありますので、大家さんも十分に理解しているはずです。
敷金は退去費用の前払い!使い切らず戻ってくることが多い
では敷金は一体いくら戻ってくるかというと、それは状況によってまちまちです。
ただ、一般的には3万円程度は戻ってきたという声が多いようです。もちろん、最初に支払っておく金額にもよるので、あくまでも一般の声だと認識してくださいね。
以下に私が実際に退去した時の金額を記載しておきますので、ぜひ参考にしてみてください。
【実際に私が退去したときの敷金】
入居時 | 敷金・家賃1か月分13万円 |
退去する際にかかった原状回復費 | 6万円 |
戻ってきた敷金 | 7万円 |
あまりにやんちゃな子どもがいたりペットを飼ったりしてしなければ、修繕費はさほどかかるものではありません。
敷金で足りなかった場合は追加で徴収される
残念ながら敷金だけでまかなえなかった場合は、別途退去費用を請求されます。
しかし、普通の生活を送っていればそうそう使い切ることはありません。もし追加で請求があったときには、どの箇所をいくらで修繕するのかといった詳細な明細をもらいましょう。
法的な取扱いとしては敷金は全額返還が基本
まれなケースではありますが、悪質な大家や管理会社によって家賃の2倍〜3倍にも上る費用を請求されることがあります。
しかし、借主が故意・過失で起こったもの以外の修繕費用は「毎月の家賃」に含まれていると裁判所は明示しています。そのため、特別なことがない限り、敷金は全額返還が原則です。
敷金がない賃貸に損傷をあたえると別途請求される
少し前から増えてきた「敷金・礼金なし」のゼロゼロ物件は入居時の費用が安く済むことから、良かれと思って住む方が多いです。
ところが、退去時に多額の費用を請求されるという問題があります。
入居時の注意ポイント①原状回復特約
先ほどもお伝えしたように、経年劣化による部屋の変化は原状回復には含まれません。
経年劣化は普通に暮らしていればで必ず起こることであり、修繕費は大家負担が原則です。
しかし、「原状回復特約」という契約を盛り込むことで経年劣化の部分を借主負担とすることができます。原状回復特約とは、本来は大家が負担すべき費用を借主が負担するという借主にとっては不利な契約なのです。
ただ、もし特約を契約したとしても、
• 原状回復特約を結ぶ必要性があり、客観的で合理的な理由が存在する
• 借主が通常の原状回復義務を超えた、大家が負担する部分の修繕をすることを正しく認識している
など、特約を実行するには条件があります。
原状回復特約については入居前に必ず説明すべき事項ですので、この説明がなかった場合には納得がいくまで話し合いましょう。
入居時の注意ポイント②敷金特約
「敷金特約」とは、退去時にかかった通常の原状回復費用以上の、本来は大家が負担すべき部分の費用も借主に請求できるとする特約です。
借主にはとても不利な契約ですから、入居前には必ず説明があります。
そのため、特約について説明を受けた借主が了承したことを示す証拠が無ければ成立しません。
本当は大家負担だけど請求されるかもしれない!?ハウスクリーニング代
退去後に実施される大規模な清掃がハウスクリーニングです。
部屋に備え付けられているエアコンやキッチン・バス・トイレなのど水回り、フローリングのワックスがけを専門業者が行います。
金額はハウスクリーニング会社にもよりますが、入退去後のパックサービスを用意しているところもあります。清掃箇所にもよりますが、~3万円ほど。
大家が負担するのが一般的なのですが、原状回復特約を結んでいると借主負担です。
賃貸の原状回復の定義は故意・過失につけたものを直すこと
原状回復と聞くと入居したときの状態に戻さなければいけないように思えますが、賃貸においての原状回復は少し違います。
キズや汚れに気をつけていても年月が経てば壁紙が色あせたり、シミが浮かんできたりしますね。そうしたものを「経年劣化」と言い、賃貸の原状回復には含まれません。
たとえば、
• 重さのあるものを床に落としてへこませてしまった
• 家具を持ち上げずに移動して床をキズつけてしまった
• ペット不可物件でペットを飼い、壁紙がボロボロになってしまった
といった経年劣化以外が原因で起こった不具合を直すのが、原状回復です。
しかし、入居時に「原状回復特約」や「敷金特約」を結んでいる場合は、経年劣化部分の請求もされる可能性が高いです。
これらの特約は、
• 入居時に特約の説明を受けたか
• 特約について同意しているのか
• 同意の証拠はあるのか
この3つがそろって初めて成立します。
もし入居時にそのような説明を受けていないなら、話し合いの場を設けることをおすすめします。
原状回復にかかる費用は家賃よりも安いのがほとんど
入居の際に敷金を支払った場合、原状回復費用は敷金から充てられます。
敷金は家賃1か月分程度であり、原状回復費用に使ってもいくらかは戻ってきます。まれに悪質な大家や管理会社を使っているところでは、追加で請求されることが……。退去前に部屋を確認しにきた業者などにより高額請求されるケースもあります。
高額請求もしくは不明点がある時には、かならず詳しい明細を送るように言いましょう。
退去前に大掃除はやる必要なし!
退去前に大掃除をする方がいますが、退去後にはハウスクリーニングを入れますので入居者による大掃除は必要ありません。
原状回復費用を抑えるためにやる方もいますが、特例を結んでいる方以外は経年劣化は請求対象外です。
見苦しくない程度に軽く掃除をするだけでも十分ですね。
大家とトラブルになったときは
残念ながら大家や管理会社とトラブルになってしまったら、以下の方法をお試しください。
トラブル対策①修繕箇所の明細を請求する
信じられないかもしれませんが、退去する際の原状回復費の明細はあやふやなものが多いです。
何に対していくらかかっているのかよく分からないのに、数万円~十数万円が請求がされることもあります。
修繕内容の詳細を教えてくれない場合や、念のために詳しく知っておきたい場合は、修繕箇所の明細を請求しましょう。
トラブル対策②ポイント②不明点が多いときは国民生活センターへ相談する
世の中は良い人ばかりではありません。自分たちの利益だけを追求する人もいます。
退去に関してあまりにも対応がずさんだったり脅迫まがいだったりするときは、国民生活センターへ相談しましょう。無料で相談に乗ってもらえるだけでなく、相談した事実を相手側に伝えることで対応が変わる可能性もあります。
退去費用を払わないと保証人に連絡がい
修繕項目の明細や対応に不満があれば、誰だってそんなお金は支払いたくないですよね。
とはいえ、そのまま支払わなければ
• 契約者に連絡と催促が来る
• 保証人のもとに連絡と催促が来る
• 法廷で争う
といった状況になると考えられます。下にいけばいくほど、泥沼ですね。
大家や管理会社に対して不信感がある場合は、先に国民生活センターに相談しておくことをおすすめします。
もし一括での支払いが難しいようなら分割払いに対応もしてくれるところもありますので、確認しましょう。
まとめ
適正な支払いならば仕方がないですが、まれに悪質な業者が存在します。
見極めるポイントは、
• 経年劣化に関しては通常の原状回復対象外
• 借主の故意・過失による損傷が対象
• 原状回復特約・敷金特約は説明・了承・証拠と揃って成立とみなす
• 修繕箇所は詳しい明細をもらう
• 悪質なンターなどの第三者機関に相談する
の、5つです。
明細を請求しただけで、当初の請求金額の半額になったケースもあります。賃貸の退去費用に疑問を感じた人は、ぜひ試してみてください。