最近は、「ペット可」の物件が増えてきました。満室にするために、持つ物件もペット可にするべきなのか?と迷っている大家さんもいらっしゃるでしょう。
ここでは、ペット可にするタイミングと方法について、「シリコンバレーのビジネスエリートたちが実践する 使っても減らない5つのお金のルール」の著者である黒木 陽斗さんに執筆していただきました。
賃貸ニーズが高まれば賃料が上昇、ニーズが下がれば家賃を避けても空室がでる
賃貸経営でもっとも重要なことは、その物件が持つ収入を最大化することです。つまり、常に満室で経営することが賃貸経営の第一目標です。
しかし、エリアにもよりますが、所有物件の周辺に新築がたくさん建ち、部屋が余る状態になると、空室が増加し、賃貸経営が深刻な状態になります。
拙書『シリコンバレーのビジネスエリートが実践する使っても減らない5つのお金のルール』に書きましたが、ものの価格は需要と供給のバランスで決まってきます。
つまり、賃貸ニーズが高く、物件数が少ない場合、競争によって賃料は上昇します。逆に、賃貸ニーズより供給が多くなれば、お部屋の賃料が下がります。
賃貸物件の場合、さらに一歩進んで物件が供給過剰になると、賃料を下げても空室が埋まらないという状態に陥ります。そこまでいたらなくても、空室期間が長く続けば、誰でも『ペット可』にしようか?という考えが頭をよぎるでしょう。
しかし、ここであなたの決断にブレーキをかける心配事とはなんでしょうか? ペットのニオイ、引っ掻きキズ、シミ等の破損、汚損が自分の物件にどれだけかかってくるかという大きな問題ではないでしょうか?
この懸念事項があなたを悩ませつづけます。
ほぼすべての部屋でペット可として入居者募集している
この悩みは多くの場合、ペット可でお部屋を貸し出した経験がない人が、ペットを部屋で飼われて、たまたま痛い目にあった大家さんや管理会社から聞いた話を、そのまま信じているケースなのです。
たとえば、「ネコはニオイがとれない」、「ペットシートを置かずに飼われたから、床にシミがついて取れない」、「柱をかじられた」、「壁や床で爪研ぎされた」、「共有部を汚される」等、そういうネガティブなお話にはキリがありません。
実は、私も同じでした。管理会社からは、面倒がられて散々ネガティブなことを言われつづけました。リフォーム業者からは、外にペット用の足洗い場の設置をすすめられました。
しかし、私の場合、ペット対応でない普通の物件でペット可にしてもこれまで大問題になったことはありませんでした。借りる人も大家にナイショでペットを飼う人ではなく、割高でも堂々とペットを飼おうという人達です。
それだけでも、許可を得ず黙ってお部屋でペットを飼う人より、はるかに良い賃借人だと私は考えています。
実際に、汚損や破損、柱をかじられたりしたことは多少ありましたが、「もうペットはイヤだ!」とか「二度とペット可にしない!」という気持ちになったことは一度もありません。
現在も私の所有物件、ほぼ全てのお部屋がペット可で入居者募集しています。
では、なぜ汚損や破損があったのに、今でもペット可で募集しているのかというと、汚損、破損等のデメリットを克服するためのノウハウがあるからです。
ペット可対応物件の運営ノウハウとは?
それは、それらの損害をあらかじめ織り込んで、損をしない契約にしておくということです。つまり、礼金や敷金等はもちろんですが、ペット規約をきちんと作って賃貸借契約書と一緒に契約します。
そこには予防接種の報告義務や、共有部でのペットの扱い方、ペットの写真や種類、大きさ、年齢、頭数、もし、変更があった場合の告知義務と罰則等、また、重要なことですが、契約書で汚損や破損等についても細かく明記して契約します。
そして、日頃から割安なリフォーム業者を見つけておくことも大切です。
万が一、汚損や破損が生じた場合、全てを交換するのではなく、面倒でも部分補修をしっかりやってくれる業者を探しておきます(もしくは、管理会社に探すように指示しておきます)。
さて、ここまで用意周到にしておけば、お金の面でメリットが多いペット可での募集も怖くなくなります。
それは、最悪のケースが既に織り込み済みだからです。もうあなたにとってペット可は数値化され、最悪のケースが見える状態になっているのです。
賃貸業者はすぐにあなたの物件を記憶する!?
一般的レベルの物件でペット可であれば、すぐにお客からの問い合わせが来るでしょう。営業マンの頭のなかに、あなたの物件がまっさきに浮かぶ状態です。
その理由は、一般的レベルの物件でペット可にしている物件は希少だからです。
いや、大家さんの多くが、一般的レベルの物件なのだから、ペット可にする必要はないとみんなが考えていて、それを出し抜いたあなたの物件が、希少物件になってしまったのです。
これまで、あなたの物件の空室が埋まらなかった理由は、賃貸需要と供給バランスの中で、他の物件との差がなく、目立つ事もなく、平均的すぎて他の競合物件の中に埋もれていたからです。
いくらがんばって北欧の家具等で飾り付けても、お客が足を運んで内覧まで至らなければまったく意味がありません。内覧に至らなければ、北欧家具で飾り付けたそのお部屋の存在すらだれも知らないのです。
ペット可物件の成約率が高くなる理由とは?
ペット可で入居者を募集するはという条件は、ペットが必須という明確なお客がターゲットになります。お客はあらかじめ、インターネット等で、賃料や広さ、間取り、通勤距離等の諸条件プラス、ペット可であることという条件を絞り込んできます。
ペットを抱えているお客、あるいはペットを飼いたいお客は賃貸の条件面でハンデがあることを理解しています。
したがって、やっとペット可という自分に合う条件を見つけて来たお客の成約率は、とても高い傾向にあるといえます。一般的なレベルの物件プラス、ペット可の物件が少ないからです。
これこそが、ペット可としただけで、需要と供給のバランスを逆転させることに成功して、一気に希少物件となることができた例です。
ご当地で希少物件となったあなたの物件は、相場より賃料もアップすることができるでしょう。
また、ペット可ということで、礼金や敷金の上乗せが可能になります。
犬と猫、その他の違いは?
さて、ペット可物件で飼われるペットには、どのような種類がいるでしょうか? 私の経験では、犬、猫、ウサギ、フェレット、モルモット、熱帯魚といったあたりでした。ただし、犬、猫は「ワオーン」とか「ニャー」とか鳴くので隠れて飼うことができません。
犬、猫の場合は、はじめからペット可物件を探して、大家の了承の上飼わなければトラブルになりますが、ウサギ、フェレット、モルモットあたりはほとんど鳴かないので大家に隠れて飼うケースも多いようです。
私の物件は、ほぼ全室ペット可物件ですが、事前にペットの申告がない場合は、敷金や礼金、賃料の条件が違いますので、黙ってペットを飼う行為は契約違反としています。もし、頭数の変更がある場合も、申告して事前に許可をとる必要性を契約書に記載しています。
さて、ペット物件の主役である、犬と猫ですが、私はあまり違いを感じません。大きな違いとしては、犬の場合は義務化された予防接種が多いことと、猫より大型になることくらいです。
また、猫を飼ったお部屋はニオイが取れないといわれています。ですが、以前猫屋敷&ゴミ屋敷と化したお部屋の立ち会いをしたことがありましたが、一部の家具まで修復、交換した工事をおこなったところ、鼻の良い私でも感じないぐらい、リフォーム後はまったくニオイが残っていませんでした。
もちろん、コレだけの汚損、破損ですので、その費用は追加で回収しました。
上記の猫屋敷&ゴミ屋敷のお部屋は、前のオーナーがほったらかしにしていたために発生したものでした。私がオーナーになってから、規約を撒き直し、ここまで酷くならないように、経営改善をしていきました。
ペット物件退去時の原状回復は?
現在、退去時にもめることの多い原状回復費用ですが、ペット可で貸し出したお部屋の場合はどうでしょうか?
ペットを飼っていたお部屋なので、さぞ問題が多いのではないかと思うでしょう。
しかし、私はこれまで、退去時の原状回復費用負担で揉めたことがありません。その理由を考えてみました。
ペットをお部屋で飼うということは、ある程度お部屋へダメージがあり、それを原状回復しなければならないと入居者が理解しているからだと考えています。その説明も契約時にきちんとおこなって、理解してもらった上で契約をしているからです。そのあたりは、一般賃貸のゆるい契約とは違います。
一般の普通借家賃貸の場合、原状回復があいまいで、国土交通省の経年劣化を含めた負担割合表がでてくると、大家さんとしての原状回復の根拠が揺らぎます。そこで、入居者と揉めることになるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
それまではありふれた一般的な物件であっても、ペット可とすることで、需要と供給のバランスが逆転して、希少物件として価値が上がります。ペット可としたリスクを織り込んで契約と経営をすれば、賃貸経営上メリットも多くなるのがペット可物件です。
それが証拠にファンド所有の物件では新築時からペット可として、敷金や礼金、割高の賃料で利回りをアップしているケースがあるのです。
※本コラムは、2017年9月10日配信されたMSPコラムを加筆・修正したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。